少年から包容力ある大人に、役とともに成長してきた[撮影:蜷川実花/hair & make up 山本浩未/styling 重光愛子/prop styling 遠藤 歩/costume ヨウジヤマモト プールオム]
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 宝塚歌劇団星組トップスター・礼真琴さん。歌、ダンス、芝居すべてに秀でた「令和のトップ・オブ・トップ」が休演後の心境を語った。AERA 2024年7月29日号の記事より。

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――2009年に首席で入団してから、抜擢の連続だ。その度に期待以上の表現で応えてきた。

 しかし、トップ就任後にコロナ禍が始まり、公演日程が不安定になった。昨年は体調不良により休演も経験した。

礼真琴(以下、礼):「順調に歩んでいる」と見られているだろうことは、下級生のころから感じていました。だからこそ、プレッシャーも大きくて、「実力が伴っていないのでは……」という思いと闘いながら、与えていただいた役に全力でぶつかる日々でした。

 そんな自分にとって、心血を注いだ公演が自分の体調不良で休演になることはとても苦しくて、悔しくて。ただ、舞台を待ってくださるお客さまがいて、星組のみんなが代わりに公演を進めると言ってくれた。だったら、私がいなくても続けてほしい、と強く思いました。

――6日後に復帰し、迎えた千秋楽後の舞台挨拶。涙をこらえながら、組長・副組長をはじめ、星組の一人ひとりを思いやる言葉を述べた。

大きな学びになった

礼:タカラヅカは基本的に皆がシングルキャスト。「誰一人欠けてはいけない」という緊張感の中で、上級生から下級生まで、それぞれの役と向き合っています。

 その中で主演がいなくなることなど、あってはいけない。そんな頑なな気持ちで自分を支えていましたが、離れざるを得ない事態になったことは、私にとって大きな学びになりました。

 実際、舞台に戻った時は、組全体が明らかにパワーアップしていて、私自身も舞台上でさらに発見があった。改めて、舞台に立つことがこんなにも幸せで、心が満たされることなのかと思いました。仲間に支えられ、背中を押してもらい、お客さまが応援してくださることのありがたさが身に沁みました。

――美しい発音と姿勢、礼儀正しさ。歌劇団の演者に共通する魅力だが、礼真琴はそこに元気、明るさ、率直さが加わる。

礼:実は緊張しいなんです。観察することが本能として身に付いていて(笑)、お稽古の時も、舞台に立っている時も、監視カメラのように自分を見ているもう一人の自分がいる。今、状況はどうなっているか、次にどう動けばいいか、と常に頭をフル回転させているので、それで疲れてしまうこともあります。

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