元気に育ったウナギ
元気に育ったウナギ

 同社の親会社「サイエンス」(さいたま市)は、浴槽用のろ過装置や、廃熱を利用して温水や冷水をつくる装置の開発などを手がける。サイエンス・イノベーションは、そうした技術を応用して魚の陸上養殖技術の研究に取り組んでいた。

 そこで武州ガスは、サイエンスと業務提携。設備や飼育方法についての助言や指導を受けながら、昨年6月には独自のろ過システムを使って地下水を循環利用する「閉鎖循環型」の陸上養殖施設を同県東松山市に設けた。

 施設内には直径7.5メートルの水槽が6つあり、最大で計6万匹あまりを養殖できる。水中に酸素を送り込む特別な装置を使うことで、より高密度な飼育ができるようにした点も大きな特徴だ。

 昨年8月から順次仕入れてきた10~20グラムの稚魚のうち、今は約4万匹を育てている。このうち250グラムほどになったものが出荷の対象になる。

「ほかの業者から、『クロコ』と呼ばれる稚魚の、通常よりも成長が遅れたものを仕入れています。生育不良のクロコは川に放流されてしまうこともあるようですが、シラスウナギが減少する中では資源の有効活用にもつながると考えています」(大河原さん)

 エサやりや設備の管理といった施設での日常業務は、ほかの部署も含めた社員1~2人で担当する。本来の業務と兼任するなどして社員がローテーションで回しているという。

 大河原さんは言う。

「ガスの供給事業も安心、安全が第一。ウナギの養殖という食に関わる事業も、当然、ガス会社として同じ心構えで取り組んでいきたい」

 ガス以外の事業を手がけるのは武州ガスだけではない。最近は電気の販売や、農業、不動産開発、マンションのリノベーション事業といった、さまざまな事業に乗り出す例が目立つ。

 都市ガス大手の東邦ガス(名古屋市)は21年から、愛知県知多市のガス工場でトラウトサーモンの養殖に取り組んでいる。

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利用した海水の一部をトラウトサーモンの水槽に