株式市場では数年ごとに暴落があります。少しずつ投資信託を取り崩していく過程のどこかで、必ず暴落が起こると考えなくてはなりません。私自身、20数年間投資してきたなかで、リーマンショックや ITバブル崩壊、コロナショックを経験しました。S&P500の下落率(月次ベース)は、 コロナショックのときには20%、ITバブル崩壊のときには46.3%、リーマンショックのときには52.6%に達しました。

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 これらの数字を見ると、投資信託の取り崩しは心理的に容易なことではない、と想像できるのではないでしょうか? 平常時にはできると思いがちですが、いざその暴落の渦中にいると、想像を絶する難しさがあります。さらに、暴落とまではいかずとも、価格の数%程度の下落は毎年のように起こります。  

 仮に投資信託の評価額が2000万円あったとしましょう。1か月で8%価格が下落したとすると、評価額では160万円目減りすることになります。そうした状況下で、その月の生活費分(年金では不足する額)の投資信託を、平常心で取り崩せる(売れる)でしょうか?  きっと、不安になります。いまビジネスパーソンである方には給料というキャッシュフローがありますが、老後にはそれがなく、投資信託と公的年金に頼るしかありません。収入が不足するなかでの資産(評価額)の減少は、想像以上にメンタルに堪えます。その状況下での取り崩しなのです。一部とはいえ価値の減少を確定することになる行為ですから、想像以上に心理的な抵抗が生じます。

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