動画配信でおわびするKADOKAWAの夏野剛社長=ユーチューブ画面から

 夏野社長は「ニコ動が標的」と発言したが、犯罪集団は当初、KADOKAWAと知らずに攻撃を仕掛けた可能性がある。情報セキュリティー大手「ラック」(東京)の専門家、関宏介さんによると、すでに解散した犯罪集団から流出した「攻撃マニュアル」に、侵入した組織が何者か調べ、企業なら財務状況を詳しく調査する手順が書かれていたという。

「犯罪集団が調べた結果、KADOKAWAとわかり『カネが取れる』と判断された可能性があります」

 KADOKAWAを襲った犯罪集団も、犯行声明の末尾にデータをダウンロードするリンクを添えていた。犯罪集団が盗み取ったとみられる同社の内部情報の一部だった。KADOKAWAに侵入した事実を突きつけ、追い詰める「常套手段」に出たと言える。

 ところが事件は思わぬ展開をみせる。

 流出したデータを不特定多数の人たちがダウンロードし、中身を分析してSNS上やネット掲示板にさらす行為が続発したのだ。ネットスラングで言うところの「祭り」状態になった。冒頭、神戸大の森井名誉教授が語った「経験がない」というコメントの意味はこれだ。

 データの中身については二次被害につながる恐れがあるため、ここでは明らかにしない。犯罪集団が犯行声明を出した翌28日、ドワンゴ全従業員の個人情報や取引先などの情報が含まれていることをKADOKAWAが認める発表をした。

新たな「祭り」始まる

 だが、これだけでは終わらなかった。

 犯罪集団がKADOKAWAとの「交渉期限」だと設定した7月1日を過ぎた2日未明、犯行声明の末尾に、新たなリンクが追加された。

 さらなる膨大な量の情報リークだった。どのくらいの情報量がリークされたのか、専門家も把握できていないほどだ。ダウンロードが集中したとみられ、一時アクセスできなくなった。

 データを一部でも手に入れることができた人たちは、分析した内容を「成果」としてSNSや掲示板に次々と報告した。ネット上では新たな「祭り」が始まったという認識だった。

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