ハライチの澤部佑
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 最近のネットニュース界隈は霜降り明星の粗品に関する話で持ち切りだ。先輩芸人に噛みついたりする彼の「失礼芸」が批判の対象になっていたりする。レギュラー番組『霜降りバラエティX』の打ち切りが報じられる一方、『FNS27時間テレビ』では総合司会を任されていることも注目されている。

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 さらに、通称「あのちゃん」ことタレントのあのと数々の仕事で共演を果たし、その関係性についてあれこれ噂されたりもしている。いまや粗品は話題性が服を着て歩いているような状態。テレビやYouTubeでの発言の一語一句がネットニュース化するような状況が続いている。

 そんな中で、ひっそりと発表された1本のニュースがあった。ニホンモニター株式会社が発表した「2024上半期テレビ番組出演本数ランキング」で、ハライチの澤部佑が初めて1位に輝いたのだ。

 澤部はこの出演本数ランキングの常連であり、常に上位につけていたのだが、1位になったことはなかった。帯番組の『ぽかぽか』が始まったことで出演本数を大幅に上乗せして、ついにトップに躍り出た。

澤部に1位の貫禄なし!?

 出演本数1位ということは、いま最もテレビに出ているタレントであるということだ。しかし、澤部にはその地位に見合うほどの貫禄がない。

 彼は、丸坊主で小太りで童貞という一種の「雑魚キャラ」的な存在としてテレビの世界に出てきた。そして、そのポジションを保ったまま、いつの間にかテレビの世界にどっしりと根を下ろしていた。

 テレビに出る人の中には、当たり前のようにその場に馴染んでいるタイプと、どこか異物感を放っているタイプがいる。澤部は明らかに前者に属する。

 番組を盛り上げるためにはどちらも必要なのだが、異物感がある人の方が目立ちやすい。そうでない人は、どんなにたくさんテレビに出ていても人々の印象には残らないし、存在を忘れられやすい。

 澤部の相方の岩井勇気は、エッセイの中でそんな澤部の本質を「無」の一文字で表現した。澤部には自分なりのセンスやこだわりというものがない。見せたいものがないので、テレビに出ればスタッフに求められているものをそのまま提供する。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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