「愛の果ての死」に続く、「憎しみの果ての死」
珠世はこの憎い男とともに死ぬこと、地獄に落ちることを願う。自分の手に無惨を弱体化させる薬「鬼を人間に戻す薬」を握りしめ、彼の肉体にその腕ごと差し込んだ。
「吸収しましたね 無惨 私の拳を」(珠世/16巻・第138話)
珠世の命は無惨の体内で尽きるが、それにより珠世と無惨は“ひとつ”になった。「不滅の鬼」になることを求め続けた無惨の夢は、彼女の生を吸収することによって揺らぐ。彼女の「家族への愛」が無惨を追い詰めていくのだ。
無惨との最終決戦が口火を切った瞬間、最初にダメージを与えたのは、鬼殺隊への愛、家族愛を持つ、産屋敷家の人たちだった。続いて、無惨を足止めしたのは、浅草の街で無惨に鬼化させられ、大切な妻を襲いかけた、ある「一般市民の男」の血鬼術だった。そこに珠世の助力が加わり、無惨の首をふっ飛ばしたのは、岩柱・悲鳴嶼行冥だった。悲鳴嶼にも「家族への愛」がある。お館様への恩義、鬼殺隊隊士たちへの想い、かつて鬼によって奪われてしまった自分の「小さな家族たち」への愛情。
鬼の珠世たちが見せた「人間らしい愛の果て」の行為。不滅を求める無惨と、人間が他者に抱く深い愛情。どちらの想いが強いのか。どちらが「永遠」を紡いでいくのか。「無限城編」でそれがどう描かれるのか、今から待ち遠しい。