2021年10月、提供した精子から生まれた4歳と1歳の男の子と交流するディランさん(ジョージア州アトランタ/ディランさん提供)

「遺伝子検査はしていませんが、誰が見ても私の子どもだと思うでしょう。とても似ているのですから」

 女の子の写真を見て、ディランは血族関係特有の親近感だけではなく、プライドさえ感じた、と語る。

「まるで自分自身を別の次元で見ているような気持ちでした」

精子バンクは「ぼろ儲け」

 精子提供者としてディランを選んだオーストラリアの母親が、2017年にフェイスブックグループを作った。現在、そのグループに47人の母親が参加しており、グループに参加する条件は「ディランが精子提供者であること」。参加の際にはディランに関する情報について、口頭テストが行われる。

 昨年12月12日の時点で、ディランの精子を使って誕生した子どもの数は92人とザイテックスから知らされたが、報告されていない子どもが5人いることがわかり、実際把握できているのは97人だ。

「精子バンクに子どもの誕生を報告するのは40%程度といわれているので、実際は200人を優に超えているかもしれません。ザイテックスは私の精子でぼろ儲けをしたのです」

 ディランは1回の提供で100ドルを受け取ったが、提供した精子は5~8個のバイアル瓶に分けられる。精子バンクから購入する側は、そのバイアル瓶1つに5千ドルから1万6千ドルを払うのだから、ぼろ儲けと言われても仕方ないだろう。

精子が大人気だった理由とは

 なぜ、ディランの精子はそこまで人気があるのか。

「自分の精子を買った人に聞いたことがありますが、人それぞれでした」

 両親が博士号を持っていることを理由に挙げた人もいれば、血の半分がユダヤ系であることを理由に挙げる人もいた。またサッカーをしていたことや楽器を弾くことを理由に挙げる人もいた。健康である証明書を持っている人が限られていることを理由に挙げる人もいた。

 ザイテックスでドナーのリクルーターを担当するローレイン・オケリー氏は、選ばれるドナーの特性についてこう回答した。

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