一昔前のテレビでは、このような複数の芸人が出演するお笑い番組が人気を博していた。特に、フジテレビには『オレたちひょうきん族』以来の伝統があり、『めちゃ×2イケてるッ!』『はねるのトびら』『ピカルの定理』をはじめとして、数多くの芸人バラエティが放送されてきた。

 この手の番組の特徴は、企画よりも出演者ありきで番組が始まっているということだ。クイズ番組ならクイズをやればいいし、料理番組なら料理をやればいい。でも、芸人バラエティでは、集めた芸人たちに何をやらせるのか、というところからスタートすることになる。

 企画の大枠が決まっていないので、番組の内容は流動的なものになり、中身がどんどん入れ替わっていく。いろいろな企画を試していって、その中からヒット企画が出るのを待ちながら、試行錯誤を続けることになる。

番組を育てるのには時間がかかる

 つまり、この手の芸人バラエティでは番組を育てるのに時間がかかる。企画が固まっていないので、当たりが出るまでくじを引き続けるしかない。数字が取れなくても、番組の評判が悪くても、ある程度は我慢する期間が必要なのだ。

 だが、今のテレビ局にはそんな余裕はないのだろう。TBSもフジテレビも当たりを引くのを待つことができないまま、幕を引くことになった。

 オードリーの若林正恭は『オドオド×ハラハラ』が始まったときの取材で「ゴールデンのバラエティーは得意ではない意識はあるんですけど、最後の挑戦にしたいと思っています。これでできなかったらあきらめようかな」と語っていた。

 出演する芸人にとっても、テレビ局にとっても、今のテレビで本格的な芸人バラエティを始めることは大きな挑戦である。挑戦を繰り返した結果、『有吉の壁』や『新しいカギ』のように生き残っている番組もある。

 ゴールデンタイムやプライムタイムに芸人バラエティをやるのは難しい時代になった。でも、テレビ局が挑戦することをあきらめない限り、芸人バラエティの灯が消えることはないだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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