事前にわかっていたこと

 立候補者が50人以上にのぼりそうなことは、事前に分かっていた。N国の立花孝志党首は、2カ月余り前の4月11日に都庁で記者会見し、多数の候補者を立てる方針を示していた。しかし都は掲示板の枠を50以上に増やす方策を取らなかった。

 白鳥教授「都選管の選挙行政に対する認識が甘かったと言わざるを得ない。例えば掲示板内に横の列をもう1列増やせば、何となくクリアできたような気がする」

掲示板の下部に止められた候補者のポスター

 ベニヤの掲示板の増設には億単位の費用がかかってしまうという。クリアファイルならもっと安くで済む。

 白鳥教授「その金額は民主主義のコスト。安いからいい、高いとだめ、という話ではない。同じ条件で選挙を行うことが何より大切で、やっぱり、都選管の落ち度なんじゃないかと思う」 

 掲示板について、もうひとつの問題は、ポスターを貼張るための枠が売買の対象となったことだ。立花党首は4月の会見で、N国に寄付してくれれば、ポスターを貼る枠を譲る旨を表明した。告示後、実際に複数の掲示板で、N国が獲得した掲示枠に選挙とは関係のないポスターが無数に貼られている。掲示場1カ所あたり、1万円で権利を売買すると仮定すると、すべてに掲示場の権利が売れれば1億4000万円以上の収益になる。候補者1人あたりの供託金は300万円なので、N国が立てた24人分計7200万円を上回り、利益が出ることになる。

 白鳥教授「選挙ポスター掲示板というのは、税金で設置されている公器と言ってもいいと思う。候補者はその公器の使用許可を得ているだけで、所有物ではない。それを売買するというのはかなりの問題だと思う」 

 掲示板の枠の売買については、多くの人が疑問を持ち、都選管にも問い合わせが寄せられている。しかし公職選挙法はこうした行為を想定しておらず、禁止する規定もないという。 

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