白鳥教授「法改正には時間がかかる。改正を待っている間に他の選挙で模倣犯が出てくる可能性もある。改正しなくとも、ポスター掲示板という公器を使って特定の個人や私的な企業が宣伝に使ったり、金銭的利益を得たりするということは望ましくないと、運営の上で決めればよかったと思う。総務省の省令でも政令でもいいので、ルールを明示する通達を出しておけばよかったのではないか」 
 

QRコードをたどると…

 ポスター掲示板の使い方にも問題がありそうだ。場所代として売買されたと思われるポスター枠には、都知事選に関係がなく、候補者とは異なる人の写真などがズラリと並ぶ。ポスターにQRコードがついていて、 出会い系サイトや求人情報に飛ぶようなものも見られる。

ポスターの隅についているQRコード

 白鳥教授「ポスターのコンテンツも問題。候補者の政治的な情報、例えば顔、スローガン、政策みたいなものを有権者に訴えるのが掲示板の本旨。目的外のポスターの掲示というのは、本旨からすれば認められないことになると思う」 

 レースクイーンなどで活躍するモデルの女性と思われるほぼ全裸姿のポスターが掲示された。警視庁は都迷惑防止条例に違反するとして警告。作成した候補者はポスターをはがした。

 白鳥教授「これが候補者自身だったら、自己表現だという議論もあり得るのかもしれないが、この女性は立候補もしていないようですね。映画作品では猥褻か芸術かという議論があったが今回のはそういうことではない」 

 選挙が本来の目的から外れて、ビジネスに利用される例が他にもあった。今年4月の衆院東京15区補選がそれだ。つばさの党が他候補の演説を妨害するなどして公選法違反容疑で代表者らが逮捕された。警視庁は同党が過激な動画配信で広告収入を得ていたとみている。

 白鳥教授「選挙をビジネスにできないようにする何らかの方策を考えていく必要がある。そうしないと、同じことがこれからも繰り返される」 

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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