ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「今週のお務め」。35回目のテーマは「不適切」について。
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ドラマも映画も、時にはドキュメンタリーも、もっとも重要なのが「枷」の存在だと言います。「枷」とは、言わば障壁・ハードルです。
恋愛ものなら、さしずめ「遠距離」「家柄」「経済格差」といったものから、「道ならぬ関係(不倫や年齢差)」「国籍」「性別」あたりも、日本の作品に「枷要素」として登場します。
今年大ヒットしたドラマ「不適切にもほどがある!」のプロデューサーがTBSを退社し、今後はフリーとして、早速Netflixの作品を手掛ける予定であるとか。
Netflixに代表される動画配信サービスで海外ドラマを観ていると、作中で「枷」となるネタの多さを実感させられます。「貧困」「人種」「ジェンダー」「セクシャリティ」「障碍」「戦争」「搾取」「不正」「拳銃」「薬物」「宗教」「虐待」「妊娠・中絶」「売春」など、実に様々な社会問題や対立構造が、「枷」としてストーリーをかき回し、登場人物たちの前に立ちはだかることで、フィクションにリアリティを添えます。
日本にも似たような問題や対立は古くから存在しています。しかしながら、そのような事案の多くはタブー視され、どこか「他人事」として捉えたがるのがこの国の特徴です。
もちろん、貧困や差別や不正や虐待を扱った作品は今までもありましたが、そのほとんどが「社会派」というレッテルを貼られます。1990年代の野島伸司作品などが良い例です。