国の施策もあり、不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりが広がる。大事なのは、当事者の声に耳を傾ける姿勢だ(撮影/高橋奈緒)
国の施策もあり、不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりが広がる。大事なのは、当事者の声に耳を傾ける姿勢だ(撮影/高橋奈緒)
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 不妊治療と仕事の両立に悩み、働き方を変える人や退職を選ぶ人は少なくない。企業の両立支援は二極化の傾向にあると指摘する専門家もいる。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

【グラフ】不妊治療と仕事を両立できない人は何割?

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 都内に住む看護師の女性(30)は、3年前、不妊治療中であることを部門長に打ち明けた。治療を隠し通して休暇を取るのは難しいと判断したからだ。

 長らく人工授精を試みた後、体外受精へと移行しようと決めた時期。採卵や、胚分割した受精卵の移植のために頻回な受診が必要となったのだ。

 思い切って伝えたものの、部門長の心ない言葉に傷ついた。

「その治療、いつ終わるの?」

 妊娠を待ち望む一方で、妊娠に至らず治療を諦めざるを得ない可能性だってある。答えに窮した女性は「わかりません……」と返すのが精いっぱいだった。だが、部門長からは追い打ちをかけるかのようにこう言われた。

「不妊治療は病気じゃないから、病気休暇の時間休は使えないよ。有給なら半休は使えるけれど、病気じゃないことのために毎回半日休むの?」

 看護師はシフト勤務で、ただでさえ人手不足で休みが取りづらい。女性の職場では、産休や育休に比べ、不妊治療で休みを取ることは、より言い出しにくい空気を感じたという。

「治療といっても、体の具合は悪くないんでしょ?という目を向けられる。でも、休みを取れなければ治療は続けられない。仕事を辞めれば、高い治療費をどう捻出するかで悩むことになるんですよね」(女性)

■職場の理解欠かせない

 女性は、年次有給休暇は労働基準法により労働者の権利として認められた休暇であることを確認した上で、再度、部門長に相談。治療を継続し、1年後に長男を授かった。「不妊治療と仕事の両立には、職場との綿密なコミュニケーションと理解が欠かせない」と痛感している。

 2017年度の厚生労働省の調査では、不妊治療を経験している労働者の約35%が「仕事との両立ができなかった(できない)」と回答していた。そのうち、約16%は両立ができずに退職に至っている。

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