「台本をもらった時は棒読み状態。なんとか役者の皆さんにアドバイスを頂き形になったと思います」
しかし、「月光かりの如く」のスピンオフとして2021年に開催された「LUXE」で再び芝居に取り組むにあたり、高橋は「本当に楽しかった」と「月光かりの如く」での挑戦を振り返っている。
「実際にお芝居に挑戦してみると、それがうまいかどうか、できているかどうかは別として……『ああ、自分はこれがすごく好きなんだ』と素直に思えたんです」(「LUXE」パンフレットより)
そして今月公演があった第3作「氷艶hyoen2024-十字星のキセキ-」で主人公・カケルを演じた高橋は、第2作よりさらに多くの台詞を伴う演技をみせた。本番での高橋を観る限り、言葉で表現することへのためらいは、もうないように思われた。
「十字星のキセキ」プログラムに掲載されたインタビューで、高橋は表現する道具としての言葉について語っている。
「演技とスケートって、表現するということは同じだと思いますが、道具が違う。スケーターは声を使って表現することはしないけど、お芝居には台詞があります。僕がこれまで経験した中では、言葉って本当に色々な形で表現ができる」
表現の道具を増やしていく高橋にとり、映画出演は、物語仕立ての演目を公演するアイスショーカンパニーを創りたいという夢への過程でもあるのかもしれない。(文・沢田聡子)
沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」