少子高齢化で人手不足が深刻になる中、多くの企業はシニアの活用に力を入れている(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 60歳で定年を迎え、その後は悠々自適に余生を過ごせたのは遠い昔。今では70歳まで雇い続ける企業が増えている。少子高齢化で働き手が減る中、経験豊富なシニア層の活用は、企業側にとっても重要な成長戦略の一つとなっている。AERA 2024年6月24日号より。

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 ニトリホールディングスはこの7月から、60歳の定年以降65歳までだった再雇用の上限年齢を70歳に引き上げる。しかも、これまでは定年前の約7割だった報酬を、基本給や一部手当を定年前と同額にし、定年前の最大9割を維持できるようにする。

 同社常務執行役員の大木満氏が言う。

「対象者を見ると、定年前後で仕事内容が同じ従業員が多くいました。同じように会社に貢献しているのであれば、同じくらいの賃金で良いのではないかという意見がトップから出て、検討して決まったのです」

 もっとも急成長した同社で、定年者が増えて再雇用が本格化するのは約10年後から。今回の制度整備はその世代が安心して働けるように先手を打った措置だったが、それでも社内の思わぬところから「歓声」が上がった。

「数年前から家電事業を本格的に拡大した関係で、家電メーカーの50代社員らを大勢、中途採用したのですが、彼らが喜んでくれました。『ニトリに来て活躍できる期間が長くなった』というわけです」(大木氏)

 中途入社の社員の出身企業は伝統的な日本企業が多い。彼らが喜んだのは、ひょっとしたらかつての日本企業でのシニアの「処遇」を思い出したからかもしれない。ついひと昔前までは日本中の会社に「シニアなんて……」という雰囲気があふれ、ある種“厄介者扱い”だった。

 それが一転して70歳まで雇ってくれるという。もちろんニトリだけではない。現実は驚くほど先に進んでいる。

「活用せざるを得ない」

 国の「高年齢者雇用状況等報告」(2023年)によると、法が「努力義務」と定める70歳までの就業機会確保措置をすでに実施済みの企業は29.7%と3割に迫っている。「65歳以上」が定年の企業は30.8%あり、66歳以上まで働ける制度のある企業は43.3%にも上る。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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