AERA 2024年6月24日号より

 リクルートワークス研究所の坂本貴志研究員が言う。

「企業はシニアを活用せざるを得ない状況になっています」

 原因は少子高齢化による人手不足だ。若手社員がどんどん少なくなり、中小企業では若手が採れないケースが増えているという。

「大企業も例外ではありません。新卒の採用具合で濃淡はありますが、一部の人気企業以外はシニアに活躍してもらう流れが強まっています」(坂本研究員)

 実際、今年度から段階的に定年年齢を65歳へ引き上げ始めた大手メーカーの資料には次のような趣旨の記述が並ぶ。

「現在3%の60歳以上の従業員の比率が10年以内に17%に上昇する。60歳以降の人材の一層の戦力化を図る……」

 60歳以降、仕事の役割は多少下がるが、60歳前と同じ人事制度の中で処遇する。このため賃金は微減にとどめる。ニトリと同様、仕事が同じなら報酬もそれに合わせる考え方だ。

 2022年度から定年を65歳に延長し、その後70歳までの再雇用を可能とする新制度に移行したTOPPANホールディングスも事情は似ている。50歳以上の社員が全社員の31%を占めるため、この層の「頑張り」を期待する。ただし再雇用は60歳代での昇給考課次第といい、対象者の約6割と見込んでいる。

 むろん、シニア活用が「一直線」で進んでいるわけではない。シニアの労働事情に詳しい法政大学経営大学院の山田久教授によると、

「現場の労働者は大いに人手不足ですが、ホワイトカラーはまだまだ余剰感があります。早期退職などのリストラを進める企業も後を絶ちません」

人事制度は3パターン

 各社の事情によって現実は「まだら模様」なのだが、シニア活用の動きを見ると人事制度としてのパターンは次の三つぐらいに分かれそうだ。

 一つは、ニトリのように60歳定年は変えずに再雇用を10年に延ばすもので、8月から全職種で再雇用を70歳まで拡大するトヨタ自動車もこのパターンだ。

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