(写真:同サイトから)
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 街の書店が減り、出版市場は縮小の一途をたどっている。特に雑誌市場はインターネットの普及もあって需要が激減。紙媒体とデジタル媒体は今後どうなるのか。課題は山積みだ。難問に取り組む現場の話を聞いた。AERA 2024年6月24日号より。

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文藝春秋、週刊文春、文春新書、書籍など文藝春秋の出版物(写真:編集部・小柳暁子)

 ネットでニュースを見ていて、この7文字を見ない日はない、と言ってもいいだろう。

「文春オンライン」

 月の平均PV(閲覧数)が約3億と、出版社系のウェブメディアの中では群を抜く、文藝春秋のニュースサイトだ。

 サイト開設は2017年1月。「週刊文春WEB」「文藝春秋WEB」「本の話WEB」の3サイトを統合した。東洋経済新報社の「東洋経済オンライン」が03年、講談社の「現代ビジネス」が10年に開設されていることを考えると、先行サイトはあったといえ後発ではあるが、またたく間にトップに躍り出る。成功の秘訣はどこにあったのか。

「文春オンライン」初代編集長の竹田直弘さんはこう言う。

「第1は、文春のコンテンツの強さ。また、オンライン1部署ではなく、文藝春秋が会社として総力をウェブに向けたところ、数字が取れたということがあります」

「花」と「団子」を

 総力をウェブにといっても、編集部にはそれぞれ独立したカラーがあり、看板へのプライドも高い。トップダウンで「デジタル化するのですべての部署が横断して記事を出していきましょう」などと言っても、反発されるのは目に見えていた。

「そういうプライドを傷つけることは絶対に良くない、というのは、まず大前提にあるんです」

 竹田さんはどうしたか。「花」=マインドセットと、「団子」=実質的利益の両方が必要だと考えた。

 他部署へ行き、「これをウェブに載せたらもっと読まれますよ」などとデジタルへの記事の提供をお願いして回り仲間を増やす。そして文春オンラインでコンテンツが読まれた数に応じ収益を分配する仕組みを、経理担当者と相談しながら作っていった。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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