久々の仕事と育児との両立に苦労する人も多い産後の仕事復帰。体力やプレーに技術が必要なアスリートはどうか。産後復帰経験者であるなでしこジャパンのコーチ、宮本ともみさんと女子サッカーのプロリーグでプレーする岩清水梓さんに聞いた。AERA 2024年6月3日号より。
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女性アスリートにとって、妊娠、出産は引退に直結しうるイベントだ。日本オリンピック委員会(JOC)強化指定選手らの調査でも、子どものいる現役アスリートはわずか1.6%にとどまる。
なでしこジャパンのコーチを務める宮本ともみさん(45)と、2021年に開幕した女子サッカーのプロリーグ「WEリーグ」でプレーをする岩清水梓さん(37)の共通点は、出産後に復帰をしていること。宮本さんは、産後に日本代表入りを果たした初の選手であり、岩清水さんはWEリーグ初の産後に復帰した選手だ。同時期に代表入りしたことがある2人が、仕事を持つ女性のひとりとして共感し合いながら、語り合った。
岩清水:私が日本代表に入りたての19歳の頃、宮本さんがお子さんと一緒に代表合宿に来ていたのが印象深く残っています。シッターさんが同行し、昼食時には宮本さんが左の腰骨にお子さんを乗せる形で抱っこをして、右手で食事をよそうのを見て「すごい!」って(笑)。その姿がキラキラして見えました。
宮本:当時、子どもは1歳。子どもに喋りかけてくれたり、場が和むと言ってくれたり、今イワシ(岩清水さん)が言ってくれたように、周りは好意的に受け止めてくれていたと感じます。
岩清水:初めての子連れでの海外遠征はどこでしたか?
宮本:2007年2月に行ったキプロス。移動中、子どもが泣いたり騒いだりしたらどうしようとすごく緊張しました。結果的に、飛行機も含めて移動中は寝たり、おとなしくしてくれたりしていました。でも、現地で発熱をしてしまって……。後から来たスタッフに小児科で処方してもらった薬をもらい、何とか事なきを得ました。