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超広角でも大口径レンズ
フルサイズ対応の一眼レフ用の20mm超広角レンズとして、世界初の開放F1.4という大口径を実現した意欲的なレンズがシグマから登場した。
フルサイズ対応のシグマの開放F1.4の単焦点レンズは、これで20、24、35、50、85mmの計5本になる。同様のスペックのレンズとしては、ライカMマウントにズミルックスM f1.4/21㎜ ASPH.があるが、バックフォーカスに余裕が必要な一眼レフ用のレンズでは従来、実現は難しい明るさとされてきた。シグマがすごいのは、それを実現しただけでなく、特殊なレンズに位置づけず税別価格15万円と抑えてきたことだ。ちなみにライカカメラのズミルックスは、実売で92万8800円だ。
本レンズもシグマの高級プロダクトラインであるArtラインシリーズに属し、性能面はもとよりレンズの外装のデザインや作り込みもしっかりしている。
シグマには以前、20㎜ F1.8 EX DG ASPHERICAL RFという大口径レンズが存在したが、比べてみると性能差は歴然。開放F値が明るくなったのにもかかわらず、今回の新しい20mmのほうが周辺光量にも余裕があり、かつ開放時の描写性能は比べものにならないほど向上している。
大口径レンズの絞り開放時に見られるハロやフレアは微塵も感じさせず、コントラストも高い。合焦点はシャープで繊細な描写をするし、ボケ味も自然な描写だ。若干タル型の歪曲収差があるが、焦点距離を考えれば、ほとんど気にならない。
従来にはない高スペック、高性能、高品位レンズを作るということに関しては、いまやシグマの独壇場となっている感がある。ズームレンズと比べれば販売数が少ない単焦点大口径レンズに対して、これだけの製品を作り上げる姿勢には感心するしかない。シグマの技術力を示すことが主な目的でもある。
このような意欲的なレンズに刺激を受け、カメラメーカーや他のレンズメーカーが今後どう対抗していくのかも楽しみだが、F1.4大口径でこれだけの高い性能のレンズができるならば、これよりもややF値の暗い、たとえば開放値をF2クラスに抑えたコンパクトで軽量、超高性能な単焦点レンズも容易に開発できるのではないかと勝手な想像をしている。このあたりについても、今後のシグマに期待したい。
デザイン
20mmレンズにはあまり見られない曲率の大きな第1面レンズが目を引く。フードは花形で固定式。Artラインに属するだけあり、高品位な仕上げで、装着カメラを選ばない
使用感・操作感
重さは950gあり、さすがに重量級だが、カメラに装着したときのバランスは悪くない。ただし、仕様上、フィルターの装着は不可。最短撮影距離は27.6cmと短い
描写性
開放時の像があまりにもシャープ。絞りを間違えて撮影したのかと思ったほどに高性能。至近距離ではボケを生かした撮影も可能。天体撮影をはじめ、室内やポートレート撮影に生かせるレンズだ
◆ 赤城耕一
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●焦点距離・F値:20mm・F1.4●レンズ構成:11群15枚(非球面レンズ2枚、SLDガラス5枚、FLDガラス2枚)●最短撮影距離:27.6cm●最大撮影倍率:1:7.1●画角:94.5°●フィルター:使用不可●マウント:ニコン用、キヤノン用、シグマ用●大きさ・重さ:Φ90.7×129.8mm・950g●価格[税別]:15万円(実売12万9600円)