「地元の人たちは『なんで、こんなところで写真を撮っているんだろうね』と言っていたのですが、徐々に外国人が増え始め、いまや一大撮影スポットです」
住民たちは当初、外国人観光客を温かい目で見ていた。ところが、生活道路で危険な横断が目立つようになると、町には苦情が増えた。
道路を挟んでローソンの向かい側にある歯科医院では、患者用の駐車場への無断駐車や、駐車場での食事、喫煙が相次いだ。注意すると、激高して罵声を浴びせられたり、火のついたたばこを投げ捨てられたりした。屋上への不法侵入もあった。何回も警察に通報したが、立ち去るのはそのときだけ。すぐに別の外国人が押し寄せる。
写真を撮りにくくして対策
住民の要望を受け、町は今年4月、「写真を撮りにくい状況を作る」(都市整備課)ことを決定した。道路(町道)と歩道の間にガードレールを設けるほか、幅20メートル、高さ2.5メートルの黒幕を設置する。4月30日から始めた工事は、5月中旬に完成する予定だ。
「黒い幕を張れば、当院の入り口が車道から見えなくなってしまうし、景観も損なうので、残念な対策ではあります。けれど、マナー違反や不法行為がこれまでの対策では防ぎきれない以上、やむを得ないと考えています」(歯科医院)
記者が訪れたときは、ガードレール設置工事の最中だった。驚いたことに、多くの外国人が「黒幕の設置」を知っていた。
「もう、この場所から写真は撮れないね。その前に来られてラッキーだったよ」(中国人のタオさん)
「地元住民が外国人に抗議して写真撮影が禁止されるんでしょ」(マレーシア人のイザさん)
「黒幕で景色を覆うのは住民にとってよいことです。それに、富士山を撮るのにいい場所は他にもたくさんありますから。とにかくここは人が多すぎます」(フランス人のソフィアさん)
大型観光バスがローソンへ
それでも、SNS映えする「富士山ローソン」の人気は根強い。
同様の構図で富士山が撮れるセブン-イレブンにも足を運んでみたが、写真を撮っている外国人は一人もいなかった。やはり、青い看板でなければ「映えない」ということか。