ローソン河口湖駅前店の周辺を歩く外国人観光客。正面は歯科医院の建物=富士河口湖町、米倉昭仁撮影

「地元の人たちは『なんで、こんなところで写真を撮っているんだろうね』と言っていたのですが、徐々に外国人が増え始め、いまや一大撮影スポットです」

 住民たちは当初、外国人観光客を温かい目で見ていた。ところが、生活道路で危険な横断が目立つようになると、町には苦情が増えた。

 道路を挟んでローソンの向かい側にある歯科医院では、患者用の駐車場への無断駐車や、駐車場での食事、喫煙が相次いだ。注意すると、激高して罵声を浴びせられたり、火のついたたばこを投げ捨てられたりした。屋上への不法侵入もあった。何回も警察に通報したが、立ち去るのはそのときだけ。すぐに別の外国人が押し寄せる。

さまざまな国の人が「富士山ローソン」に魅了される=富士河口湖町、米倉昭仁撮影

写真を撮りにくくして対策

 住民の要望を受け、町は今年4月、「写真を撮りにくい状況を作る」(都市整備課)ことを決定した。道路(町道)と歩道の間にガードレールを設けるほか、幅20メートル、高さ2.5メートルの黒幕を設置する。4月30日から始めた工事は、5月中旬に完成する予定だ。

「黒い幕を張れば、当院の入り口が車道から見えなくなってしまうし、景観も損なうので、残念な対策ではあります。けれど、マナー違反や不法行為がこれまでの対策では防ぎきれない以上、やむを得ないと考えています」(歯科医院)

 記者が訪れたときは、ガードレール設置工事の最中だった。驚いたことに、多くの外国人が「黒幕の設置」を知っていた。

「もう、この場所から写真は撮れないね。その前に来られてラッキーだったよ」(中国人のタオさん)

「地元住民が外国人に抗議して写真撮影が禁止されるんでしょ」(マレーシア人のイザさん)

「黒幕で景色を覆うのは住民にとってよいことです。それに、富士山を撮るのにいい場所は他にもたくさんありますから。とにかくここは人が多すぎます」(フランス人のソフィアさん)

混雑するローソン河口湖駅前店周辺の歩道。そのすぐ横を大型バスが通過する=富士河口湖町、米倉昭仁撮影

大型観光バスがローソンへ

 それでも、SNS映えする「富士山ローソン」の人気は根強い。

同様の構図で富士山が撮れるセブン-イレブンにも足を運んでみたが、写真を撮っている外国人は一人もいなかった。やはり、青い看板でなければ「映えない」ということか。

SNS映えしないのか、セブンイレブンと富士山を撮影する外国人観光客はいなかった=富士河口湖町、米倉昭仁撮影
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