「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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今回は「未来のローソン」の構想をお話しします。
コロナ禍になり、従来のローソンの使われ方から一歩進めて、日常生活で必要なもの──たとえばお豆腐や食パンから、お総菜、冷凍食品、靴下や化粧品まですべてをローソンで買っていただこう。そんなふうにリアル店舗での使われ方をトランスフォーム(変化)させてきました。
一方で、自由にお店に来ることができないお客様に対しては「デリバリー」というニーズがあることも、コロナ禍を通してわかってきました。そこで今度は、「スマホでオーダーしていただき、お届けする」というサービスにもチャレンジしています。
つまり、現在約1万4600あるリアル店舗の資産にテック(技術)を組み合わせることで、早さを武器にするeコマース業界にも参入し、より新しい便利をお客様や町や社会に提供するという仕組みです。
背景には深刻な人手不足もあります。その点でもテックやデジタル化は欠かせません。店頭でのセルフレジや、店内厨房でのロボティクス導入、アバターを使った薬の販売や介護相談も推進していく。
その結果、ローソンがその町で暮らす人たちの生活の「ハブ」(中核)になる。そんな未来も描けるのではないかと。いわば「ローソン・タウン構想」です。ローソンを中心にして、町のみんながリアルでもリモートでもつながりあい、支え合いながら暮らしていく。
まずは店舗のデジタル化を進めたうえで、町づくりに着手する。そんな道筋が浮かびます。ローソンが考える「リアルスマートタウン」あるいは「リアルテックタウン」とでも言いますか。リアルの人たちがテックでつながる、さらに便利で住みよい町。2030年頃にはそういう町ができればいいなと。未来に向けて模索していきます。
◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2024年5月13日号