かわいそうだから名刺くらい、と交換すると、実は後で面倒なことに。写真はイメージ(GettyImages)

「内定式で聞いていた話と違う」

 「ノルマがあって1日100枚配り終えるまで帰らせてもらえませんでした。何とか100枚配っても、次にまた100枚渡されて、永遠に終わる気配はありませんでした。上司からは『新人研修と名乗れば受け取ってくれるから』と言われましたが、ほとんどの人から嫌な顔をされました」

 名刺はほとんど受け取ってもらえず、時には、駅員を呼ばれて注意されることもあった。1日でノルマ分を配り終えられないと、「その程度なの?」と上司に詰められた。

 「毎日がもう限界だったんです」(勝俣さん)

 昨年9月の内定式では「研修では外回りも含めて営業の基本を学んでもらいます」と言われていたし、入社前の懇談会で先輩社員は「会社の上司も、お客さんもみんな優しいから大丈夫」と話していた。何から何まで話が違うと感じた。

 名刺を配り終えると、次の一週間はひたすら営業電話をかけさせられた。誰もが知っている大企業の社員の電話番号リストを渡され、上司から「このリストに片っ端から電話かけるように」と指示された。

 昼休みも犠牲にして、一日300件以上の営業電話をかけ続けたが、契約どころか、前向きに考えてくれるケースすら1件もなかった。会社から支給された携帯の番号を検索すると、迷惑電話としてネットで注意喚起されていた。そのサイトの口コミ欄を見ると、男性の名前も“迷惑電話の主”として書かれていた。その名前を見るたびに、「この仕事をやっている意味はあるのか」「人のためになっていないのでは」と思うようになった。

 「入社前は、先輩社員と営業先を回ったり、営業テクニックを教えてもらったりするのかと思っていました。しかし、待っていた仕事はオフィスの一室での電話がけ。これが仕事としてずっと続いていくのかと思うと、無理だなと思いました」

 ちなみに、初任給は額面で15万円。勝俣さんを含めて、同期15人中5人が研修中に辞めたという。

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「新人歓迎会」で絶望