テリー伊藤さん(撮影/上田耕司)

昭和には「悪い面」もあった

「今は昭和ブームだという背景もあるでしょうが、ドラマで取り上げられている『昭和』は、喫茶店でクリームソーダを注文するシーンや女性が髪の毛をくるくる巻きにするシーン、懐かしい風情の建物とかが出てくる。ドラマというリングの上で、そうした昭和の風情と過激なセリフが調和するから、視聴者は安心して見られたと思うんですね。だけど、昭和には、もっと別の悪い面だってあったことも事実でしょう」

 テリーさんが言う「悪い昭和」とは、一体どんな光景なのか。

「街を歩いていれば恐喝されたりして、暴力も日常茶飯事だった。ヤクザの任侠映画シリーズが人気で、神戸では暴力団が実際に抗争を繰り広げていました。東京でも学生たちがゲバ棒を振り回したり、機動隊に投石したりする騒乱事件が起こった。もっと身近なところでは、隅田川にゴミをバンバンぶん投げたりしていた。そういう昭和の姿もあったわけです」

 こうした視点がなかったところは「少し物足りなかった」としたうえで、テリーさんは「ふてほど」がヒットした理由をこう述べる。

「あくまでも、やさしい昭和だからでしょう。ドラマという枠の中で、みんなで安心して笑いたいという欲求を満たしてくれるドラマだった、そういう感じがします」

 実際、昭和の時代には「ふてほど」では描写されていないような過激な「現場」がいくつもあった。テリーさんはプロデューサーとして、常識破りのバラエティー番組を生み出してきた“当事者”だ。

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