皇族方が出席される公務や公式行事は、ときに皇族方のお気持ちや、心配りの様子が垣間見える機会でもある。そんな公務の「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2月16日に掲載した記事の再配信です。肩書、年齢等は当時のもの)。
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天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが、9日に「デビュー」した、皇居・宮殿での昼食会(午餐)。愛子さまが食事を伴う公式行事に出席されるのは初めてで、招かれたケニアの大統領夫妻らにスワヒリ語であいさつし、ケニアの大臣とはほぼ通訳を交えずに英語で会話した。あたたかな雰囲気に包まれた昼食会となったが、あくまでおもてなしの場。宮中に長く勤めた人物によれば、宮中での食事会は皇室の方々にとって、気配りと努力の連続であるという。
「ハバリ(ごきげんよう)」
午餐の席上、両陛下から紹介された愛子さまは、隣に座ったケニアの投資貿易産業大臣らに向かって笑顔を向け、スワヒリ語であいさつ。その後は英語で会話を続けたという。
初々しい愛子さまのデビューは、両陛下と愛子さまがご一家そろってのアットホームな場となった。
今回は、愛子さまが通訳を交えずに接遇したことにも注目が集まった。
宮内庁で儀式を統括する式部職を長く経験した人物は、こう話す。
「もちろん晩餐会や午餐といった接遇の前に天皇、皇后両陛下や陪席される皇族方は、大使などを通じて相手国に関する知識や社会情勢について学ばれます。賓客に気持ちよく過ごしていただけるように、話題を準備なさることも接遇では大切です」
晩餐会や午餐といった場で、通訳者は出席者のうしろに椅子を置いて待機する。天皇陛下と元首や賓客との会見では、公式の面談ということもあって通訳を交えることも多い。一方で、晩餐会や午餐に陪席する皇族方は、英語の場合は通訳がいないことも珍しくないという。
「通訳を交えると時間がかかる分、会話を交わせる時間が半分になってしまいます。そのため通訳を交えず接遇なさることもあり、お客様も喜ばれています」
愛子さまの席は、ケニアの大統領と投資貿易産業大臣の間。ルト大統領からは「ぜひケニアに来てください」と言葉をかけられるなど、心和む空気が続いたようだ。
「いまの両陛下は留学を経験なさって英語が堪能でおられますし、愛子さまも熱心に語学を学ばれているとのことですから、素晴らしいおもてなしになったのではないでしょうか」