かつての芸能界では、事務所を辞めたタレントは「干される」ということがあった。所属タレントが安易に独立してしまうことを防ぐために、出演先や移籍先に圧力をかけて、出演や移籍ができないようにする、ということが半ば公然と行われていた。
しかし、最近では、公正取引委員会が芸能事務所のそのような動きは「優越的地位の濫用」にあたり、独占禁止法に違反するという見解をまとめたことで、業界の空気が変わってきた。少なくとも、あからさまに圧力をかけられるようなケースは減ってきている。
一昔前の芸能界でそういう慣習がまかり通っていたのは、芸能人が有名になるための手段がテレビに出ることしかなかったからだ。テレビの影響力が圧倒的に大きい時代には、そこに出るために事務所に所属するというのが唯一の選択肢だった。
「辞めたらテレビに出られなくなる」は過去の話
しかし、今では芸能の才能がある人間が自分を表現するための場所がテレビ以外にもたくさんある。「事務所を辞めたらテレビに出られなくなるぞ」という脅し文句がもはや機能しなくなっている。
もちろん、最近では既存の芸能事務所もYouTubeをはじめとする新しい形の芸能活動のサポートをしようとはしているのだが、それが一番の得意分野というわけではないので、どうしても限界はある。そういうことがきっかけで芸人たちは自らの足で歩いていくことを選ぶ。
なかやまきんに君、みやぞん、キンタロー。など、ここ最近で独立を果たした芸人は、いずれも強烈なキャラクターと常人離れした特技を持っていて、才能にあふれた者ばかりだ。事務所を離れても彼らの未来は明るいだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)