小林聖心女子学院小学校では、読書会で読書の感想を話し合うなど本を通じたコミュニケーションの授業(6年生)を行う(写真:小林聖心女子学院小学校提供)

『若草物語』や『十五少年漂流記』など多くの人が子どもの頃に親しんだ児童書。いまその表紙がキラキラしたアニメ絵に変化している。子どもに寄り添い、手に取りたくなる本が読書の世界を広げる。AERA 2024年4月8日号より。

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「今は本以外にも、エンターテインメントが溢れる時代。子どもたちに名作を届けたいと思うなら、まずは楽しいと思える本を手に取ってもらうことが大切。漫画やアニメから原作やノベライズ本に入るのもいいし、人気イラストレーターの表紙に興味を持ってもらうのも、物語を届ける一つの方法だと思っています」と講談社青い鳥文庫現編集長の白土知之氏は語る。

 小学校低学年のうちから本に親しんでほしい、と図書の授業や読書会を通して、子どもたちが楽しみながら本を選ぶ経験を大切にするのは、兵庫県宝塚市にある小林聖心女子学院小学校の司書教諭・合屋月子氏。図書館には毎月約100冊、年間1千冊以上の新刊が補充される。ジャンルは小説、知識・教養、ノンフィクション、漫画、専門書などさまざま。

子どもたちの居場所に

 だが、ここでも子どもたちに真っ先に選ばれるのは「かわいい表紙の本」だ。

「ほとんどの子が、見た目のかわいいアニメ絵が表紙の本を手に取ります。ただ名作に関しては、あえて昔ながらの表紙のものと、最近刊行された可愛らしいイラストの表紙のものの両方を所蔵しています」と合屋氏。その理由は「アニメっぽい表紙が苦手な子」が一定数いること。もう一つは、「最初はアニメ絵に惹かれて手に取った子も、本を選ぶ力をつければ、パッケージのかわいさから自然と卒業していく」から。読書を楽しみながらいろいろな本に触れる経験を積めば、表紙の華やかさだけに頼らず、本の内容を見て選ぶようになる、という。

「図書の授業ではいろいろな種類の本に出合える仕掛けをしています。子ども同士が紹介しあったり、読書会で本を通してお互いの考えを語り合ったり、保護者を前に本を読んだ気づきを発表したり……本をコミュニケーションのツールとして活用する機会を作り、読書に親しんでもらえたらと思っています」

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