ジンバブエから南アフリカへ出稼ぎに来ていた姉妹。 ケープタウン・南アフリカ 2009/Cape Town,South Africa 2009
ジンバブエから南アフリカへ出稼ぎに来ていた姉妹。 ケープタウン・南アフリカ 2009/Cape Town,South Africa 2009
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長距離バスも、国境を簡単に越えていく。ブルキナファソから、西アフリカのマリ、トーゴ、ベナン、ナイジェリアまでの路線が用意されていた。 ボボデュラッソ・ブルキナファソ 2013年/Bobo Dioulasso, Burkina Faso 2013
長距離バスも、国境を簡単に越えていく。ブルキナファソから、西アフリカのマリ、トーゴ、ベナン、ナイジェリアまでの路線が用意されていた。 ボボデュラッソ・ブルキナファソ 2013年/Bobo Dioulasso, Burkina Faso 2013

 広大なアフリカ大陸のうち25カ国を訪ねてきた、フリーランスライターで武蔵大学非常勤講師の岩崎有一さんが、なかなか伝えられることのないアフリカ諸国のなにげない日常と、アフリカの人々の声を、写真とともに綴ります。

【アフリカン・メドレー フォトギャラリー】

 国境を越えると聞くと、どのようなことを思い浮かべますか。

 シリア難民問題が拡大化するなかで、テレビなどで報道される国境は、いつも頑強にガードされ、命がけで乗り越えるもののように思えます。一方、ヨーロッパ諸国では、市場へ買い物に行くために毎日国境を越えるといいます。我々にとって国境は、ある意味不可思議な存在と言えるかもしれません。

 どちらかといえば物騒な話題が報じられることの多い“アフリカ”ですが、今回は国境にまつわる意外な事実をお伝えします。

*  *  *

 周囲を海に囲まれた日本に住む私たちにとっては、国境といえば海であり、陸上の国境は想像しにくいものだ。有刺鉄線で隔てられ、機関銃を持った国境警備隊がこちらを睨んでいるような風景を思い浮かべる方が多いかもしれない。しかし、アフリカの多くの国境は、案外あっけないものだ。

 国境を幹線道路が貫くような場所では、「ようこそ○○へ」と記された看板とともに、それなりの鉄柵が設けられていたりするが、往来の少ない地点では、国境を隔てる柵すらない。また、国境周辺に住む人々にとっては、こちら側も向こう側も、同じ「地元」の一部。あたりまえのように、国境を行ったり来たりしている。

 私もこれまでに、うっかり国境をまたいでしまったことが度々あった。

 国境を越える通過点となる街や村に到着しても、往来の少ない場所では誰の目にもわかるように国境のラインが引かれていることはなく、街や村の風景に、入国管理事務所が完全に溶け込んでいることもある。国境の通過者自らが、周囲の住人に、どこに税関事務所があるのか、どこでパスポートに入出国印を押してもらえるのかなどを、聞いてまわる必要がある。

 国境を越える気軽さとあっけなさは、入国後も度々感じる。

 ブルキナファソで泊まった宿のスタッフと雑談をしていると、「あなた、コートジボワールには行ったことがある?」と質問された。彼女は同国の首都ヤムスクロ近郊の街からブルキナファソへと働きに来ているのだという。時々は、里帰りしているとも話していた。

 コートジボワールのアビジャン市内にある酒場では、商店主が話す滑らかな英語に驚いた。この国での公用語はフランス語であり、英語を話す人を見つけることは少ない。どうして英語を話せるのかを尋ねると、「私はガーナ人だから」とのこと。隣国ガーナの公用語は英語だ。

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