渋谷が生んだカルチャー
最近、アドトラックの問題がメディアでも取り上げられ、特にナイトレジャー業界のトラックがやり玉にあがっている。この状況に、塚本氏は大きな危機感を抱いているという。
「10年ほど前、街なかを出会い系サイトのトラックが大量に走るようになった時は、『アドトラック=悪』という論調で報道されました。そして今、ホストクラブさんなどのトラックが目立つようになったことで、再びアドトラックのイメージが悪くなり、顧客が離れている現実があります」
そこで塚本氏は「世間の印象を悪くするようなトラックは一台でも減らしたい」という思いから、この3月中に一般社団法人「日本屋外移動広告協会」を立ち上げ、代表理事に就く予定だ。各事業者を一つの傘の下に束ねることで、たとえばアドトラックの製造を手がける業者に対して、自社広告用の車であっても販売前には自主的にデザイン審査を受けるよう、協会として呼びかけることができる。
そこまでして業界を守ろうとする塚本氏には、「この仕事への自信と誇り」があるという。
「車をメディア作品にしたアドトラックは、渋谷が生んだ一つのカルチャーだと思っています。この文化を次の世代に残すには、イケイケどんどんで人の目を引こうとする時代から、街や人や行政と共存するあり方を目指す時代へ移行しなければいけないんです」
アドトラックは、街を彩る発信の場として広く親しまれる存在になれるのか。業界は今、岐路に立っている。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)