都や警視庁が合同で行った広告宣伝車の実態調査。画像の一部を加工しています

横行している「抜け道」

 また、塚本氏が請け負った音楽業界の案件では、広告に表示したCDのジャケット写真について、「なぜ人の頭が半分見切れているのか。全部入れるように」と指摘された。世界観を表現するためにあえてアーティストの顔が半分だけのぞくデザインだったのだが、あまりに無理難題な指摘に「これは既に世に流通しているCDジャケットで、自分たちではどうすることもできない」と反論し、なんとか認めてもらったという。

「審査基準の解釈が担当者によって異なる印象があり、不公平感や不信感を抱きかねません」(塚本氏)

 こうした指摘について、AERA dot.編集部は同協会に取材を申し込んだが、「審査内容については当協会ホームページの記載をご確認下さい」と具体的な回答はなかった。

 そして、塚本氏が挙げるもう一つの課題が、ホストクラブやキャバクラなどのナイトレジャー業界で既に横行している「抜け道」だ。

 実は、自ら所有する社用車に広告を掲載する「自家用広告」の場合、現行の都条例では、たとえ都内ナンバーであってもデザイン審査の対象にはならない。そこで、アドトラック業者の車に広告を掲載してもらう「第三者広告」ではなく、業者に自社専用のトラックをつくらせて買いとれば、審査を受けていない車両を走らせることが可能になるのだ。今年3月に改正された都条例の施行規則でも、自家用広告については都内ナンバー/都外ナンバー問わずデザイン審査の対象外だ。

 この「抜け道」について都はどう受け止めているのか。都市整備局の屋外広告物担当職員に話を聞くと、「自家用広告などで新たな課題が生じた場合は、今後の状況を見つつ継続的に検討していく。ただ事業者の方々には、今回規制対象を広げることになった経緯を踏まえ、都市と調和した広告のあり方をよく考えて頂きたい」という回答だった。

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「アドトラック=悪」という論調