「柿が赤くなると医者が青くなる」という諺があるくらい、ビタミンとミネラルが豊富な柿。ツヤツヤのおもちゃのような姿と酸味のないお菓子のような味が、とっても個性的なフルーツですね。秋が深まるのが嬉しくなる、柿のパワーとは。さらに「柿の種」問題についてもスッキリさせましょう!
この記事の写真をすべて見るビタミンCはレモン以上! タンニンが老化・二日酔い・体臭を防ぎます
学名は「Diospyros kaki(ディオスピロス・カキ)」、日本語がそのまま使われています。意味は「神様の食べ物」。 縄文・弥生時代の遺跡から柿の種が出土し、『古事記』や『日本書紀』には柿の名前が記されています。平安時代の法典『 延喜式(927年)』にも記録が残され、木簡には「干し柿献上」の記述が。日本人と柿は、古くから深く結ばれていたのですね。
いちばんの特徴は「お菓子級に甘くて 酸味のない味」。たいていの果物は、酸をためることで 種ができる前に動物に食べられてしまうのを阻止しますが、柿は渋み(タンニン)でそれを防げるので、酸が不要だったともいわれます。干し柿は、しばしば和菓子の甘さの基準とされてきました。
おもちゃみたいなツヤツヤで固い皮は、他の果物と比べて密度が高く気孔がほとんどないため。なんと呼吸は、ヘタでしているのだそうです。
柿は、レモンより多くのビタミンCを含み、一個食べると1日の必要量を摂れてしまいます。夏に紫外線を浴びた肌を復活させ、これからの季節は風邪予防の強い味方に!
柿のオレンジ色には、抗酸化作用のあるβカロテンや、発がん抑制作用があるといわれる物質が含まれます。渋み成分のタンニンにはアルコールを分解する作用があり、さらに利尿作用のあるカリウム、酸化還元作用のあるビタミンCと、3つの相乗効果で二日酔いに効果的です。
美容健康茶として知られる「柿の葉茶」。豊富なタンニンは老化の原因となる活性酸素を除去し、コレステロール値を下げ、動脈硬化や高血圧を防止します。また、体の悪臭成分と結びついて体臭・口臭を防ぐ効果もあります。
ただし、鉄分の吸収を妨げる作用もあるので、貧血気味の人は飲みすぎないようにしましょう。
「柿の種」問題。 種なしなのに なぜ増える? おせんべい なぜこの形?
<問題>
現在、お店に並ぶ柿は多くに「種なし」と書かれていますね。切り分けやすく食べやすいので大人気です。でも、種がないのにどうやって増えるのでしょうか?
<こたえ>
「簡単にいえば、種のある柿を育てて(台木)、種のない柿の枝(つぎ穂)を接ぎます。これで、種なし柿もどんどんふやすことができます」(北陸農政局HPより)。
じつは、種なし柿のほぼ全ては渋柿。収穫したそのままでは渋くて食べられないので、「渋抜き」をしてから出荷されます。現在は、炭酸ガスによる設備が多いそうですが、アルコールやお湯で抜く方法もあるそうです。柿を買ってきたら、風通しのよいところに2〜3日置いておくと、残っている渋も抜けて皮が柔らかくなり、とろっと美味しくなりますよ。
<問題>
そしてもうひとつ気になるのが・・・ビールのおつまみに欠かせない、ピーナッツと細長いピリ辛おせんべいが混ざった『柿の種』問題。記憶にある柿の種は、もっとコロンと丸い形だったはず。どうしてこれを柿の種だというのでしょうか。丸くしたかったのに、途中で潰れてしまったのでしょうか?
<こたえ>
昔ポピュラーだった「筆柿」の種が、まさにこういう形でした! 愛知県原産の柿で、果形が筆の先の部分に似ていることからこの名前で呼ばれます。
『柿の種』を製造販売するメーカーのHP(リンク先参照)によると、はじめから「柿の種形にしよう」と狙ったわけではなく、小判型に焼くための金型をうっかり踏みつぶしてしまい、それで焼いたらこうなったらしいです。そのおせんべいを見た人から「これじゃ柿の種だな」と言われたのでそういう名前にした、という事情が・・・ 大正時代の当時、イメージされたのが「筆柿」の種だったのですね(それにしても、ほんとうに途中で潰れていたとは)。
食卓のお皿がパッと明るく!ニオイの気になるメニューやお酒の後にも◎
ヘタがきれいで果実との間に隙間がなく張り付いているもの、果皮がしっとりしてハリがあり全体的に色づいているもの、持ったときに重みがあるものを選びましょう。ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存すれば1週間ほど持ちますが、常温だと2日ほどでやわらかくなります。
天ぷらや白和え、なます、サラダ。おかず系には、サクッとした食感のものが使いやすいのでは。やわらかめのものは、自然の甘みとしてパウンドケーキなどの焼き菓子に混ぜたり、プレーンヨーグルトに加えたりするのもお勧めです。和菓子やゼリー、ジャムやジュースにも。やわらかくなりすぎた柿は、冷凍するとシャーベットとして楽しめます。
デザートに柿を食べると、タンニンの消臭作用がニンニクなどの口臭を消してくれます。また、お酒を飲んだあとに柿ジュースを飲むと、胃粘膜の蛋白質とタンニンが反応して アルコールが吸収されにくくなるそうです。
食卓に映えるオレンジ色で、気持ちも明るくあたたかに。甘くとろける美味しい柿を食べて、風邪の季節もパワー全開で過ごしたいですね。