2013年6月、スペインで歓迎を受ける皇太子さま(当時)
2013年6月、スペインで歓迎を受ける皇太子さま(当時)

 カルロスさんの説明を経て、無事に対面のあいさつは交わされたという。

 多いときは週に1回、忙しい時期でも月に1回ほどのペースで10年以上にわたり授業は続く。

 また、ゆくゆくは公務を担う愛子さまの立場を考えたのだろうか。

「愛子には、英語より先にスペイン語に触れさせたいのです」 

 そうした陛下の願いで、当時6歳の愛子さまもカルロスさんの授業に参加した時期がある。カルロスさんは、スペイン流に頬を合わせて愛子さまへあいさつをした。

 お父さまの隣にちょこんと座る愛子さま。陛下が文法などに取り組む間、カルロスさんと愛子さまは絵のついたカードを使い、遊びながら簡単な会話や単語に触れた。

 勤勉な陛下らしく、事前の準備は欠かさず、授業中はしっかりメモを取るなどをして、愛子さまのサポート役も務めたという。

 授業の様子はどうだったのか。

 カルロスさんは、思い出したように少し微笑んで、こう言った。

「6歳の子どもが外国語を学ぶのは難しいものです。集中力が途切れると、隣の(当時の)皇太子さまに『ピアノの楽譜はどこにあるの?』などと授業に関係ないことを話しかけていらっしゃいました。(愛子さまとの)授業自体は1年ほどでしたが、楽しい思い出です」

 それから10年以上の歳月が流れた。

 カルロスさんは、愛子さまが学習院大学での第二外国語としてスペイン語を選択したことを陛下から聞き、嬉しさを感じたという。

 陛下は、「自分の思いを自分の言葉で伝えたい」という思いを実行に移している。

 13年、「日本スペイン交流400周年」を機に行われたスペイン訪問。当時のフェリペ皇太子夫妻主催の晩さん会のあいさつで、陛下は東日本大震災での支援に感謝を示している。 この時、陛下に同行した外務省の通訳は、カルロスさんの研修所での教え子だった。後日、カルロスさんはその教え子から、陛下があいさつで触れた震災への支援のお礼と、漫画やアニメ、フラメンコやワインといった日本とスペインの文化交流の部分については、外務省が準備した原稿ではなく、陛下自身が言葉を選び、あいさつ文を練ったと聞いた。

 そのときのあいさつは、次のようなものだった。

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