厚生労働省も、女性が妊娠や結婚、出産したら退職すると就業規則などであらかじめ決めることや、退職させてはならないことを指針で示している。
職場結婚を理由にした当事者への退職勧奨は、女性に圧力がかかる可能性が高いが、その点は、民間では法律でしっかり禁止されている。だが、この雇用機会均等法の9条は公務員には適用されないという。
ただ、村松弁護士によると、地方公務員法の13条には、「全て国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われなければならず、人種、信条、性別、社会的身分若しくは門地によつて、(中略)差別されてはならない」とあり、興味深い裁判例を示す。
1960年代、ある自治体の女性職員が採用時に、「職員同士で結婚したら夫婦どちらかが退職する」との誓約書を提出させられ、実際に職場結婚をしたところ、退職勧奨を受けて依願退職に追い込まれた。女性は退職に追い込むのは不当だとして裁判を起こし、判決では「退職は無効」と女性が勝訴した。
職場内での結婚を躊躇してしまうことも
裁判所は判決の中で、誓約書を理由に辞職を迫ったことについて、
「結婚の自由の制限になるといわざるをえない」
「結婚の自由は憲法により国が国民に対して保障した基本的人権の一つであり、地方公共団体である被告は、憲法の保障した人権を尊重する義務があり、合理的な理由がなく結婚を制限することは法律上、禁止されているものと解すべきだ」
と指摘。地方公務員法の13条を引き合いに、公務員に対しても同じだとの判断を示した。
村松弁護士は、職場結婚について、
「特に人数が少ない職場ですと、人事配置上の制約や上司、部下の関係になることの難しさが一番、問題となるとは思います」
としつつ、こう続ける。
「50年以上も昔の裁判で、『結婚の自由の制限になると言わざるを得ない』との判断が出されています。退職の勧奨だけであれば、直ちに違法とは言えないかもしれませんが、このような慣行や内規は、職場内での結婚を躊躇(ちゅうちょ)するきっかけになってしまう可能性があり、やはり廃止して欲しいと思います。そのうえで、ご夫婦も家庭の事情を職場に持ち込まないなどの努力をされると、良い前例になるのではないでしょうか」
(AERA dot.編集部・國府田英之)