戦後のハイパーインフレの惨状を世界に発信するためのスチール撮影にしては、いささかのどか過ぎる経緯だとは思うが、たぶんこんなかんじだったんじゃなかろうか。
今見ると、子供と犬という経済とは遠い存在を配置することによって、異常なインフレの恐怖がより伝わってくる。たまたまスタッフが犬を飼っていた間の良さと、そのサムの前向きさと、Pの閃きに感服。
まぁ、よく見りゃそのなんとも言えない表情の子供らが成金のおぼっちゃまくんでないことはよくわかるのだが。とにかくハイパーインフレ、とても怖い。
成金といえば、これまた歴史の教科書に同じく第一次世界大戦後の日本の好景気を表す風刺画が掲載されている。大正時代の成金が百円札に火をつけて微笑んでいるお馴染みのアレだ。
女性「暗くてお靴が分からないわ」
成金親父「どうだ 明るくなったろう」
ほろ酔い加減の成金はなんともいえない笑みを浮かべながら、惜しげもなく百円札に火をつけて女の足元を照らしている。
当時の百円は今でいうと三十万円ほどらしい。それに火をつける。そんな人、ホントにいたのか? お金でそんなことしていいのか? 親にどんな教育されてきたのか? いくら酔っているからってお金燃やす?
主演のベテラン俳優も監督に苦言を呈すに違いない。いや、あれは絵だけどね。仮に、リアルだったらという話でね。
監督「そこをなんとかやって頂けませんか?」
俳優「ありえないよ! お金を燃やすなんて! 僕には出来ないな……」
監督「オーバーな表現で風刺するという意味もありますし、第一お金は作り物、フェイクの紙ですから!」
俳優「作り物なの? じゃあ尚更出来ないよ。作り物だからって燃やすというのもどうかと思うし、作り物ならやらないほうがいい! そこはリアリティを追求するべきだ! でもお金は絶対燃やしちゃならない!」