落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「インフレ」。
歴史の教科書に、札束と子供の写真が出てくる。第一次世界大戦後のドイツはハイパーインフレに陥って、マルクの価値が暴落、物価が一兆倍に。紙屑同様になったマルク紙幣の札束を手に、子供たちが積み木のようにして遊んでいる写真だ。学生の頃、子供の顔の横に吹き出しをつけて「ぽっくんは歩く身代金ぶぁい!」と書き、その男の子の頭をおぼっちゃまくん(©️小林よしのり)の髪型に描き換えた記憶あり。
改めて検索してその画像を見てみると子供は三人、そばに犬、足元にもいい塩梅に札束が転がっている。いかにも、仕込みました! という写真。恐らくハイパーインフレ喧伝のために使われたのだろうが、なんか慌てて撮ったようなかんじなんだよな。
制作スタッフの男性が撮影前日にプロデューサーから急に告げられたのかもしれない。「明日さ、君のとこの子供借りられないかな?」と。
スタッフ「……明日の撮影でさ、お前のところの子供使えないか?って聞かれちゃって……どうしよう?」
妻「べつにいーんじゃない? みんなどう? お父さんのお仕事場についていく人? お写真撮ってもらえるみたいよー!」
子供たち「行く!」「行くよ!」「行く行く!」
犬「ワンっ!」
スタッフ「うーん、サムは連れていけないなぁ」
子「えー、いーじゃん! サムも一緒じゃなきゃヤダヤダヤダ!!」
犬「くぅ〜ん(寂しげに)」
スタッフ「仕方がないなぁ……じゃあみんなで出かけるか……その代わりいい子にしてるんだぞ、お前たちも……サムもなっ!!(笑顔)」
子供たち「ハーーーイっ!」
犬「ワオーーーンっ!」
スタッフ「あのー、犬もついてきちゃったんですけど……」
プロデューサー「犬か………いーねっ!! それいただきっ!!」