「身分証、住所の詳細、家族構成を送るように言われ、自宅の前でバイクの免許証を自撮りして送りました」
持ち物としてサングラス、マスク、ハンマーを持ってある駅に行くように言われ、バイト内容を聞いていくと強盗であることが想像できた。
「ヤバイと思ったので、やめます、と伝えたけど、『今さら抜けられると思うなよ』『自宅がわかっている。責任取ってもらうぞ』などと脅されて後にひけなくなりました。『たれ込んだらどうなるかわかっているよな』とも言われて、警察に相談するのも怖くてできませんでした。自分が捕まる可能性もあるかもしれないと思うとなおさら……」
言われた日時に指定された駅に行った。午後10時を過ぎていた。集まったのは計4人。1人が白のバンで来た。そこから現場に向い、指示された通りに強盗の犯行に及んだ。5万円の報酬をその日に手に入れた。
「その2週間後の早朝、警察が自宅に来て逮捕されました」
男性はいわゆる普通の家庭に育ち、普通科の高校に通う生徒だった。グレているわけではなく、ゲームで遊ぶための金が欲しかったという理由で、すぐに現金を手に入れられる闇バイトに手を出してしまった。約1年、少年院で過ごしたという。




闇名簿流出の背景、ぞんざいに扱われる個人情報の実態
昨年12月、記者は新宿・歌舞伎町のあるバーで、闇バイトに詳しい人物と会った。
40代男性のA氏。これまで特殊詐欺のリーダー格として2~3年稼働し、2千万円以上を手にしたという。2015年に詐欺容疑で逮捕され、実刑判決を受けた。その後は「足を洗った」と話す。
A氏によると、一連の強盗事件の背景には闇名簿が存在するという。
A氏は、
「その名簿であらかじめ襲う先を定めて、闇バイトを発注する」
と説明した。
「闇名簿には氏名、年齢、住所、職業のほか、家族構成から電話番号までが入力され、なかには貯金額まで書いてある」
闇名簿は、それを専門に扱うブローカーから買うのだという。自分たちでさらに詳しい情報を付け加えた名簿を作るケースもあるという。
なぜそこまで詳細な名簿をつくることが可能なのか。