闇バイトで集められた集団による強盗や特殊詐欺などの事件が後を絶たない。その背景には、大量の個人情報が蓄積された“闇名簿”なるものが存在し、犯罪グループはそれを基に狙い先を決めているのだという。強盗の被害者や闇バイトに手を出した高校生、特殊詐欺の元リーダー格の話から、犯行時の生々しい様子や闇バイトの募集手口、闇名簿の入手方法を聞いた。【後編】では、個人情報がどういう流れで流出し、どのような過程で闇名簿が出来上がっていくのかを、名簿を作って売買するブローカーに聞いた。
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「なぜ私の家が狙われたのかわからない」
昨年1月、連続強盗事件の被害にあった関東地方に住む70代の男性はそう話し、当時の様子を振り返った――。
午前0時過ぎ、男性は1階の寝室で妻と寝ていた。突然、寝室のガラスが割れる音が聞こえ、ほぼ同時に妻が悲鳴を上げた。1人が押し入ってきたが、暗くてはっきり見えず、両肩を押さえつけられると口を粘着テープでふさがれた。男は力強く、体格は大きいと感じた。妻は口のほか、手足も粘着テープで縛られていた。
男に、
「静かにしろ! 大声を出すな、カネを出せ」
と言われ、財布のある洗面所に案内した。
手足を粘着テープで
電気をつけると、男はマスクをして、手に金づちをもっていた。強盗に襲われた、ということを実感し、恐怖感がおそってきた。
数万円の紙幣を財布から取り出して手渡した際、「これだけか?」と言われ、「これしかない」と答えたときに包丁を手に持った男が洗面所に現れた。男性の印象では、2人とも似たような格好だった気がするが、細かい着衣は覚えていない。
その後、妻がいる部屋に連れていかれ、手足を粘着テープで縛られた。そこで、男が3人いることを確認した。金庫の場所とカギのありかを聞かれ、場所を伝えた。男の気配がなくなったと感じたときに、自分で粘着テープをはがし、スマホから110番通報した。固定電話の線は切られていた。