日本のジェンダーギャップ指数は世界最低クラス。中でも政治分野で男女格差が際立っている。女性議員が増えると議会にどのような変化が生じるのか。AERA 2024年3月11日号より。
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自民党の麻生太郎副総裁が1月の講演で、上川陽子外相の容姿について「そんなに美しい方とは言わない」「おばさん」などと言及した。令和の時代にまだこんな発言が出るのか、と唖然とする。しかも、政権中枢の政治家からだ。
こうした「男性優位の上から目線」の発言が繰り返される背景には、ジェンダー差別の根深さがある。それを顕著に示すのがジェンダーギャップ指数だ。同指数は、世界経済フォーラム(WEF)が各国の男女格差を4分野で評価し、毎年発表している。2023年版の日本のランキングは146カ国中125位で、06年の公表開始以来、最低。中でも「政治」は世界最低クラスの138位だった。
政治分野で男女格差が際立つのはなぜなのか。ジェンダー論に詳しい東京大学の瀬地山角教授は「理由は明白」と言う。ジェンダーギャップ指数の「政治」のランキングを決めるのは「国会議員(衆院議員)の男女比」「閣僚の男女比」「過去50年間の行政府の長の在任期間の男女比」の3要素。瀬地山さんによると、衆議院の政党別の女性議員比率は昨年夏段階で共産党が20%、立憲が13.5%、公明が12.5%、維新が12.2%だったのに対し、自民は8%と低さが目立つ。
「自民党以外の党も大して比率は高くありませんが、最大勢力の自民党が全体の足を引っ張っているのは明らかです。自民党が変わらない限り、このデータは改善しません」(瀬地山さん)
選択的夫婦別姓も女性の国会議員や判事が過半数を占めれば、とっくに導入されているはず、と瀬地山さんは言う。法相の諮問機関の法制審議会は1996年に選択的夫婦別姓の導入を答申したが、政治は四半世紀以上、動かなかった。国立社会保障・人口問題研究所が22年に実施した全国家庭動向調査で選択的夫婦別姓への賛成は61%。野党だけでなく公明党も賛成している。にもかかわらず、自民党が保守派を中心に「家族の一体感を損なう」などと反対しているためだ。