ひとりじゃない「身近に仲間」という心強さ(イラスト:サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 ポッドキャスト番組「OVER THE SUN」のリスナー分布を調べたところ、佐賀県よりアメリカ・ニューヨーク州でのほうが多く聴かれているとわかりました。在米日本人の方が無駄話に飢えていらっしゃるのかも。

 すべての無駄を省いた無駄話、つまり純度100パーセントの与太話なので、こちらも声高に聴取を勧めるのは気が引けます。佐賀県の方も、気が向いたらいつか……。ささやかな期待を私は胸に抱いておりましたところ、なんと佐賀県から講演の依頼が舞い込みました。当然、受ける。フフフ、楽しみ!

 というわけで、佐賀県にお邪魔してきました。当初は佐賀市内の会場で行う予定が、応募が殺到したため、500人収容できる大きなホールを持つ隣の小城市に会場を移す嬉しいハプニングも。500人規模は私も初めてです。

 とはいえ、あくまで無料講演。イベントには歩留まりの悩みがつきもので、500人応募があったから500人全員が来るとは限りません。

 当日、私は少し心配しておりました。会場の場所が変わり、交通の便が変わってこられない方が少なからずいるのではないかと。

 しかし、蓋を開けてみれば超満員。ありがたい! 自慢をしたいわけではありません。そうはならない時もあるのです。真面目な県民性がなせる業でしょうか、ほとんど全員が出席してくれるなんて奇跡。少し前にお邪魔した岐阜もそうでした。

 講演会のあと、聴講者のひとりがSNSに投稿していた感想が私の胸を打ちました。曰く、「自分ひとりだと思っていたけれど、周囲にこんなたくさん仲間がいたなんて」。

 まさに。私が男女共同参画社会を推進する講演会で全国に足を運ぶ理由のひとつが、自分ひとりではないと知ってほしいから。オンラインで友好の輪を広げることは簡単になったけれど、「身近に仲間がいる」と目視できる心強さは格別です。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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