立派なカメラをファインダーとレンズ双方から覗き込むあどけない子猫たち--。こんな決定的瞬間を撮影したのは、小野一俊さん。被写体は、幼き日の愛猫ウミとジンだ。
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「ジンくんとウミちゃんが、置いていたカメラのレンズフードとファインダーを両側から覗き込んでいて、とにかく『撮らねば』の一心で大急ぎで撮影しました。画角は広いし、ピントもカメラにきているんですが、二度とはない奇跡の一瞬です」
さて、小野さんは撮影した猫写真をSNSなどで発信している。猫たちの躍動感ある写真の数々には、思わず息をのんでしまう。
瞬速で恋に落ちた
小野さんが本格的に猫写真を始めたのは、2020年5月、同僚に誘われて、猫島・田代島に遊びに行ったことがきっかけだ。一眼レフは持っていたが嗜む程度、当初は猫も写真もそこまで興味があるわけではなかったという。猫はあまり動かず、おとなしいイメージがあった。だが、田代島の猫たちは違った。野生動物のようにすばしっこく動く。予測不能な動きに翻弄された。
「まったく思うように撮れなくて、うまく撮りたいな、と。そして、そんな猫たちのしぐさを見ているうちに、『かわいいな』と思っている自分がいました」
瞬速で恋に落ち、猫写真熱に火がついてしまった。次の週には、田代島にリベンジに行っていた。以来、毎週のように島に通うようになった。会心の写真が撮れた時のことは、今もよく覚えている。
「島にはヤシの木があるんですが、そこを猫が駆け上がったとき、シャッターを切りました。ちゃんと撮影できたとわかったときは、感動しましたね」