日本人なら常にリスクを考えておくべき「胃がん」。どう防げばいいのか?
日本人なら常にリスクを考えておくべき「胃がん」。どう防げばいいのか?
山口俊晴(やまぐち・としはる)がん研有明病院病院長。 1973年京都府立医科大学卒、アメリカテキサス大学ヒューストン校留学、95年に京都府立医科大学助教授に。2001年財団法人癌研究会付属病院消化器外科部長を経て、2005年同病院消化器センター長。2008年癌研究会有明病院副院長を経て、2015年7月より現職。
山口俊晴(やまぐち・としはる)
がん研有明病院病院長。 1973年京都府立医科大学卒、アメリカテキサス大学ヒューストン校留学、95年に京都府立医科大学助教授に。2001年財団法人癌研究会付属病院消化器外科部長を経て、2005年同病院消化器センター長。2008年癌研究会有明病院副院長を経て、2015年7月より現職。

 かつて臓器別がん死亡者数・患者数の1位だった胃がん。近年、死亡者数は徐々に減少してきたが、未だ日本は世界的に見ても胃がんの発症が多いと言われ、超高齢化社会のなかで増加するとの声もある。日本人ならそのリスクと切っても切り離せないなか、どう胃がんを防げばよいのか。胃がんのスペシャリストの同病院・山口俊晴院長に聞いた。(聞き手/医療ジャーナリスト・渡邉芳裕)

●塩分の多い食べ物、タバコが胃がんリスクを高めていた!

――日本人は胃がんが多いといわれていますが、現在はどうでしょうか。

 40年前は、日本のがん患者は胃がんが圧倒的に多く、臓器別がん死亡数の割合も胃がんが第1位でした。しかし、近年では食生活の変化や医療技術の進歩によって、死亡率は減少しており、平成10年からは肺がんと入れ替わって第2位になっています。ただ、罹患数では依然として胃がんが第1位であり、超高齢化社会を迎えるなかで、高齢者の胃がんが急増しているのが実情です。また、胃がんは男性に多い傾向にありますが、40歳未満に限ってみると女性の死亡率も比較的高くなっています。

――胃がんのリスク要因には、どのようなものがありますか。

 胃がんのリスク要因として大きいのは、まず塩分です。加工肉や燻製肉、たらこ、干し魚、漬物、焼肉など、塩分を多く含む食品を食べ過ぎると、胃がんのリスクが高まると考えられています。この他に、食品ではお焦げも胃がんになりやすいといわれていますが、毎日、大量に食べ続けることがなければ問題ありません。

 もう一つ、胃がんの大きなリスク要因とされているのがタバコです。タバコは、胃がんだけでなく、様々ながんのリスクを高める可能性があるので、今タバコを吸っている人は、禁煙するように心がけましょう。

――タバコをたくさん吸っていても、胃がんにならず長生きする人もいますが。

 これは、人によって発がん物質に対する抵抗力に差があるからです。発がん物質は様々なものに含まれていて、少しずつ体の中に蓄積されていきます。これが満期になったときにがんができるのですが、満期になるまでの許容量が大きいほど、がんになりにくいといえます。また、発がん物質の攻撃に対する修復能力が高い人も、がんに強いといえるでしょう。がん自体は遺伝しませんが、こうした体質は受け継がれますので、がんの家系の人はリスク要因をできるだけ減らすことが大切です。

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