天皇陛下は2月23日、64歳の誕生日を迎えられた。元日に起きた能登半島地震で取りやめになった一般参賀も実施され、新型コロナ対策の抽選もなく、広く国民から祝賀を受けられた。天皇陛下とご一家の「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2023年10月15日に掲載された記事の再配信です。肩書や年齢等は当時のもの)。
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コロナ禍で延期されていた国体の開会式に出席するため、天皇、皇后両陛下が10月7日、鹿児島県を訪問した。翌日には県の特産物であるサツマイモの加工会社を視察。そこは、若手社員らも交えた、あたたかい交流の場になった。
「ええと、『この~木、なんの木』に出てくる木です……」
サツマイモの生産・加工を手がける鹿屋市の南橋商事の矢羽田(やはた)竜作社長(45)は、とっさにCMソングの一節を歌った。
というのも、天皇陛下が休憩室に置かれた一枚板のテーブルを気に入り、「すごくよかったです。材質は?」とたずねてきたのだ。
しかし、名前が出てこない。あせった矢羽田さんは思わず「CMで有名な木です」と歌ったのだ。答えは、モンキーポッド(アメリカネムノキ)。野生のサルが実を好んで食べたことが名前の由来だといわれる。
幸い、すぐに雅子さまが答えに気づいてくれた。
「ああ!」
おふたりは顔を見合わせると、
「あの木なんですね」
と笑った。
南橋商事は、平均年齢20代後半の社員9人と規模は小さいが、数年前から香港など海外にサツマイモを輸出するなどして成功し、県内でも勢いのある会社だ。
おふたりには畑で芋の収穫作業を見てもらう予定だったが、外は激しい雨と風。視察はサツマイモの貯蔵庫に変更された。
矢羽田さんは、県の特産品であるサツマイモの品種について説明。そのなかで、陛下らしいやりとりがあった。