このときは、人気バンド「X-JAPAN」の元リーダーのYOSHIKIさんが自作の曲を披露し、バンド「GLAY」やプロ野球の松坂大輔選手らが舞台に上がり、客席と一緒に君が代を歌った。
一方で、大学院の教授がYOSHIKIさんに質問状を送るなど皇室の祭典に、ロック歌手や有名人を招いて、国民を動員することへの疑問を投げかける声があった。
さらに、2009年に開催された即位20年を祝う「国民祭典」となると、「EXILE」が起用され話題を呼んだ。EXILEが奉祝曲の「太陽の国」を歌うと、ライトアップされた二重橋に姿を現した天皇陛下(現・上皇さま)は身を乗り出し、美智子さまは両手を握りしめて見つめた。客席からは、「キャー」というファンの黄色い声が沸きあがった。
「皇室ファンもアーティスト目当ての若者も一緒になって、お祝いのちょうちんを持ち、国旗を振った。皇居前広場は熱気であふれかえっていましたね」(当時取材した記者)
もうこのときは、人気アーティストを起用することに、強い反対意見はほとんど出なかった。
そして今回。令和の即位を祝う「国民祭典」には、1年後に活動を休止する「嵐」が出るとあって、警備側は「20万人規模のファンが皇居前広場に押し寄せたらどうするか」と当初は頭を抱えていたという。
しかし、ダンスを封印し、真剣に歌う様子が影響したのか、コンサートのような熱狂的な歓声があがることはなかった。
「20歳前後の女性2人が、『嵐が出たら、『キャー』って声をあげてもいいのかな』とヒソヒソ話していましたが、おとなしく座っていたようでしたよ」(60代男性)
「嵐」の出番が終わると、ソプラノ歌手による国家独唱や、集まった人びとによる君が代の斉唱。
最後は、祭典を主催した「奉祝国会議員連盟」会長の伊吹文明氏が音頭をとり、「天皇陛下 万歳」と会場全体が万歳三唱する形で終わった。
ところが、続けざまに、男性のアナウンスで「天皇陛下、万歳」「皇后陛下、万歳」「天皇皇后両陛下、万歳」と万歳三唱の声が皇居前広場に流れ続ける。その音頭は、天皇陛下と雅子さまが二重橋から退出するまで続いた。
広場に集まった3万人近い人たちが日の丸の旗を掲げて万歳三唱する映像が中継されると、Twitterには「止まらなくてこわい」「どこかで見た場面だ」と困惑する投稿もあった。なかなかやまない万歳三唱に、互いに顔を見合わせて苦笑している人の姿も多く見られた。
終わりは、すこしばかりモヤモヤしたが、雅子さまは、国民との一体感を感じた一夜であったに違いない。(本誌・永井貴子)
※週刊朝日オンライン限定記事