天皇陛下は2月23日、64歳の誕生日を迎えられる。元日に起きた能登半島地震で取りやめになった一般参賀も予定され、新型コロナ対策の抽選もなく、広く国民から祝賀を受けるという。天皇陛下とご一家の「あのとき」を振り返る(この記事は「週刊朝日」に2019年11月10日に掲載された記事の再配信です。肩書や年齢等は当時のもの)。
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11月9日、天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」が皇居前広場で開かれ、約3万人(主催者発表)が集まった。アイドルグループ「嵐」がお祝いの歌を披露し、祭典がクライマックスを迎えると、雅子さまが涙ぐむ場面もあった。
君が笑えば世界は輝く
誰かの幸せが今を照らす
二重橋に立つ天皇陛下と皇后雅子さま。陛下の隣でほほ笑みながらも、口元にきゅっと力を入れているようにも見える。
アイドルグループ「嵐」が歌うのは、この日のためにつくられた奉祝曲「Journey to Harmony」である。 歌詞に「ひとしずく」「水」「大河」と水に関連した言葉が盛り込まれているのは、陛下のライフワークである水の研究を意識したものだという。
大丈夫 君と歩いてゆこう
「嵐」が、最後のフレーズを情感たっぷりに歌いあげると、ステージの照明が落とされ皇居前広場は静寂に包まれた。
うなずきながら天皇陛下と短い言葉を交わしていた雅子さまは、さっと顔を戻し、笑顔を広場のほうにむけた。目線の先には、ちょうちんと日の丸を高く掲げ、皇居前広場を埋め尽くさんばかりの人びとの姿がある。
国民に受け入れられたと実感し、感極まったのだろうか。頬に流れる涙を、雅子さまは、右手ですっとぬぐった。
朝日新聞によると、おなじとき、長女の愛子さまもおしのびで訪れ、皇居正門付近から、祭典を見守っていたという。
雅子さまが「嵐」の歌の終盤で、涙をぬぐうドラマチックなシーンは、皇居前広場を感動に包んだ。
皇居前広場は、いつの御代でも時代を映す舞台である。そもそも、天皇陛下の即位を祝う祭典に、アイドルや芸能人が立つのは、いつからだろうか。
昭和天皇の在位50、60年は政府主催の式典が日本武道館や国技館で行われただけだった。在位60年のときは、昭和天皇が二重橋まで出て、皇居前広場に集まった人たちに答えた。
広場に新しい風が吹いたのは1999(平成11)年のこと。明仁天皇の即位10年を祝う「国民祭典」が、政府の式典とは別に、開かれたのだ。主催は、日本商工会議所会頭を会長とする民間の「奉祝委員会」と超党派の国会議員連盟(森喜朗会長)だった。