同じ経済アナリストとして活躍する森永卓郎さん・康平さん親子。卓郎さんの体調が思わしくない間は、父の仕事を康平さんが代打として務めることもあったという(写真:文化放送提供)

 経済アナリストの森永卓郎さんがすい臓がんを公表した。公表を進言した息子の康平さんが、公表に至るまでの経緯や心境が明かした。AERA 2024年2月19日号より。

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 昨年12月27日、経済アナリストの森永卓郎さん(66)がステージ4のすい臓がんを公表した。森永さんの息子で、同じく経済アナリストとして活躍する康平さん(39)は母からの電話で父親のがん罹患を知ったという。

「11月8日に母からLINEで『家に来れる?』と連絡があったんです。『話すことがある』というので、悪い話ということは予想しました。『今すぐには帰れないけど、何の話かは知っておきたい』と伝えたら電話がかかってきて『父がすい臓がんのステージ4と診断された』と。ショックというよりはただ驚きました」

「春前には死にます」

 互いに多忙で頻繁に会うことはなかったが、それでも森永さんとは月に1度ほどは仕事場で顔を合わせていた。ラジオや連載、単行本の執筆など日々の仕事を精力的にこなしていただけに、想定外の話だった。

 4日後の11月12日、康平さんは埼玉にある実家に帰った。そこでがんが発覚した森永さんと初めて対面する。

「普段と何も変わらなかったですね。ベッドに寝たきりというわけでもないし、会話も普通にできる。暗くなっている様子もない。だから、父とは『がんなんだね』『そうなんだよ』という最初の会話以外は、自分から病気の話はしませんでした」

 検査での話や予兆の話などは父から直接聞いた。昨夏に背中に痛みが走ったが数日で治ったこと。最近食欲がなく体重が減ってきたことを医者に相談したら検査をすすめられたこと。そして、CT検査の結果、すい臓に影があると診断された。

「ステージ4のすい臓がんは余命が短いというのはよく聞く話ですし、実際に医者からは『春前ぐらいには死にます』と言われたらしいんです。母はとにかく『困った、困った』とずっと言っていました」

 頭をよぎったのは仕事関係者など、周囲への影響だった。森永さんのスケジュールは母親が管理しており、講演などさまざまな仕事の依頼が届く。先々のスケジュールをどこまで受けていいものか。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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