山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「亜鉛欠乏症」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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「舌がピリピリする……」「口の中も、なんだかずっと苦い」

 コロナと言えば、「味覚異常も引き起こす」感染症であることを、すでに誰もが知っていたであろう、2022年の春のことです。

 舌のピリピリとする違和感や、苦味感(味覚の異常)を感じるようになったと思ったら、その数日後には、ひどい倦怠感までも自覚し、寝込んでしまいました。

 コロナパンデミックの最中だったこともあり、コロナに罹患してしまった可能性を強く疑った私は、自宅にあった新型コロナウイルスの迅速抗原検査をすることにしたのです。

コロナは「陰性」ではナゼ?

 しかしながら、結果は「陰性」。翌日、クリニックで採血検査を実施してもらったところ、まさかの「亜鉛欠乏症」であることが判明したという出来事がありました。

 あれから、もうすぐ2年が経とうとしているこの冬、再び「亜鉛欠乏症」を発症してしまったのです。

「亜鉛って、あまり知らないかも」という方もいらっしゃるかもしれません。

 亜鉛は、ヒトの必須微量元素の一つであり、私たちの体の中で、ホルモンの合成や分泌の調整、DNA合成、タンパク質合成、200種以上の酵素の構成や酵素反応の活性化、免疫反応の調節、生殖、創傷修復といった広範囲な役割を担っています。そのため、身体の成長や維持に不可欠な栄養素だと言っても、過言ではありません。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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亜鉛は体内で生成できない