批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。
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自民党の支持率が急落している。時事通信の1月の世論調査では14.6%。これは野党時代を除き、1960年の調査開始以来最低の数字だ。
裏金問題が響いている。問題は会計責任者らの起訴で幕引きとなった。国民の怒りと失望は深い。こうなると本来なら政権交代が見えてくる。しかしそうなっていない。野党に支持がないからだ。
21日投開票の東京都八王子市長選では、自公推薦の候補が接戦を制した。八王子は裏金疑惑の中心である萩生田光一前政調会長の地元だ。結果的に禊となった。開票翌日、同氏は記者会見を行った。3千万円近い裏金が事務所の引き出しにしまってあったが、深く考えていなかったという。信じがたい言い訳だが、これが通用するのが今の日本の政治だ。
野党が支持されない理由は明らかだ。維新は万博のゴリ押しで民意が離れている。能登半島地震後の幹部の発言でさらに信用を失った。しかしより深刻なのは左派だ。
共産党は18日の党大会で田村智子新委員長を選出した。23年ぶりの党首交代でイメージ刷新を図ったが、同氏は同じ大会で、党見解と意見を異にする出席者の発言を厳しく糾弾し、早速物議を醸している。動画を見たが、時代がかった言い回しに首を傾げた。