個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は「大好きな方々との貴重な夜」について。
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オーノー。
ノーノーオーノーノーノーオーノーオノー小野ーオーノーオーノー大野ー。
こういう書き出しをしないと、つまりこういう恥ずかしい書き出しをして「恥ずかしさの上書き」をしないと正気を保てない程度には、恥ずかしい。
昨年末、行き着けのバーで呑んでた僕は、小栗旬に電話。
「来いよ~小栗~、○○(僕の地元)に来いよ~」
雰囲気で僕が泥酔状態であることを察知したであろう小栗は冷静に答えます。
「いま、〇〇で呑んでます。二朗さん、来ます?」
「やだー、おぐちゃんが来てよー、おぐちゃんがこっちに来てよー、おぐちゃんが来てくんなきゃやだー」
なにをお前は甘えてるんだ。小栗はお前の奥さんじゃないぞ。てか奥さんにだってそんな甘えちゃいかんだろ。ウザイ。ウザイぞ二朗。と、冷静にいま思うと自分にそう言いたいのですが、泥酔二朗の暴走列車は止められません。
「来てよーおぐちゃん来てよー」
僕の一万倍ほど器の大きい小栗は、先輩俳優の常軌を逸した気持ち悪い甘えにも動じず、笑いながらこう答えます。
「ちょっと待ってくださいね。ある人に代わります」
誰に代わるんだろと思っていたら、
「二朗。酔ってるな」
ひ、ひえええー、吉田鋼太郎さんではありませんか。
「せ、せ、先輩! 鋼太郎先輩! すぐに! すぐにわたくしの方から、わたくしめの方から! そちらに駆けつけますです!」
小栗同様、大好きな俳優、しかも大先輩の鋼太郎さんの声を聞いた途端、手の平返し。暴走列車、わりかし小者。すぐにタクシーに乗り込みます。
小栗と鋼太郎さんが呑んでる店に着きますと、なんとなんと、これまた大好きな俳優、藤原竜也くんも呑んでるではありませんか。
もうこの時点で楽しくなっちゃってテンションマックス。暴走列車(※小者)の楽しさマックス。酒は一層進み、酔いもマックス。記憶はミニマム。てか、なくなる一方。