インタビューに応じる水上恒司さん。ノートを読み返して驚いたこととは?(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 朝ドラ「ブギウギ」で、スズ子をひたむきに愛する村山愛助を演じている。役作りでは作品ごとに、その役の人生を自分なりに膨らませたノートを作るという。今回、ノートを読み返してみると、つづっていたのは「ひたすらスズ子のことばかり」。これには「自分自身も驚いた」と語った。

【写真】「ブギウギ」で演じている愛助と自分について語る水上恒司さん

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「本当に、ひたすらスズ子のことしか考えてなくて、愛助の『我』があんまりないんですよ。ゼロではないんですけど、すごく少ない。それがまた、不思議だなと思いました」

 愛助は元々スズ子の大ファンだった。つまり、今でいう「推し」と恋に落ちたことになる。

 愛助のスズ子を見つめるキラキラした表情が、以前、インタビューで先輩俳優・綾野剛への尊敬ぶりを語ってくれた水上自身の姿に重なった。

「僕は凡人なんです」

「もしかして素に近い役なのか」と問うと、少し複雑そうな表情を浮かべた。

「以前、映画『アウト』の監督の品川(ヒロシ)さんが、『ゼロにいくらかけてもゼロにしかならない。その人の中にあるものを膨らませながら役を作っていくしかない』とおっしゃっていた。

 ゼロから1や2にできる人って天才だと思うんですが、僕はそうではなく、凡人なんです。なので、役を自分のほうに引き寄せるというよりも、僕が役に寄っていくんですね。僕の素に近いと思わせられるぐらい、自然に演じられているのなら、それは誇らしいんですけど、僕からすると『あれは僕ではないんだよね』という……。

 でも、剛さんに対する思いや、スズ子に対する愛助の熱さが確かに僕の中にあるからこそ演じられているとは思います」

「愛助」という空っぽの筒に「自分」を

「役に寄っていく」とは、どういった作業なのだろうか。

「例えば、『愛助』という空っぽの筒があるとして、それを埋めるために自分を入れていくイメージです。それもきれいな筒ではなく、時にいびつな形をしていたりする。そこに『自分のこういう部分はハマるかな』とあてはめていく感じです。

 自分のほうに役を寄せる作業をしちゃうと、結局はその役者本人でしかない、と思っています。役に対して『自分にはこういう部分があるな』と埋めていって、足りない部分があったら、資料を読んだり新しく経験を積んだりして補ったうえで、膨らましています」

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趣里の座長としての振る舞いに刺激