竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 元日に起きた能登半島地震で大きな被害が出てから、3週間がたちました。

 地震発生時、私は店舗の巡回の途中で新大阪駅にいました。ローソンでは震度6以上で自動的に災害対策本部が立ち上がることになっていますので、本部に連絡をとり、津波警報が出ている地域はとくに「店舗の関係者は全員避難」を伝えました。

 とはいえ、いつも24時間365日店を開けていますので、鍵はどうやって閉めるんだっけ?とバタバタしてしまう店もあるんです。そんなときも「戸惑うならそのまま即逃げて」を徹底しました。

 東日本大震災のときの教訓があります。現地の方にお話をうかがったとき、揺れがあった後も、コンビニでお客様が途切れなくて店を閉じられなかった。その結果、津波に襲われてしまうケースがあったそうなんです。

 津波の危険があるときには絶対に店を開け続けてはだめだと気づきました。むしろ店をすぐに閉じることが、「コンビニまで閉まっている、これは非常事態だ」というメッセージを地元の人に伝える大きな意味を持つと思います。

被災地に入り、富山日赤病院前店などを応援訪問しました

 本地震や西日本豪雨の時もそうでしたが、現場に入れる状況になったら必ず、応援部隊を送る日に私も現地に入ることにしています。

 4日に、休業中の石川・七尾の店舗を開けるタイミングで、私も現地に入りました。道路がひび割れている様子や、給水所に小さいお子さんが水をもらいにきて両手で抱えて運んでいく光景などを目にしました。やはり現地に身を置くことで、より実態が把握でき、何が必要で、社員やお店の方々に何を言わなくちゃいけないのかがよくわかる。それを痛感しました。

 引き続き安全確保をファーストプライオリティーにしつつ、日常のお買い物を現地の方々にしっかりと提供していきたいと考えています。

◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

AERA 2024年1月29日号