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 家の断熱対策はどうするべきなのか。「職人社長」を名乗る平松明展さんは「冬は暖かく、夏は涼しい家にするためには断熱対策がとても大切になる。ただし、断熱性を高めたいからといって、透湿抵抗値の高い断熱材を二重にする『外断熱』はやめたほうがいい」という――。

※本稿は、平松明展『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

「新築住宅の悲劇」を招く5つの事態

 現在の住宅建築では断熱の施工をすることは常識です。ただ、すべての住宅で断熱性が担保されているかというと、そうでもない事実もあるのです。

 断熱性を追求するひとつに、断熱材を増やすことがあります。

 断熱材を厚くすると冬は暖かく、夏は涼しくできる理論は間違っていませんが、湿気や結露対策がされていなければ建材が劣化して建物の耐久性もどんどん低くなってしまいます。

 その結果、断熱材も劣化して断熱性まで失われることになります。追求した断熱性が実現されず、さらに家の耐久性などに支障が出てしまうことは悲劇としかいいようがありません。悲劇を招く事態は次の5つです。

①湿気を室内にとどめてしまう

 昔ながらの日本家屋は木材中心で、壁には土を使っているため通気性に優れていました。現在の住宅は新建材やビニールクロスを使用しており、なにもしなければ湿気がとどまりやすく結露が発生しやすいと思ってください。

断熱材を二重にする「外断熱」はやってはいけない

 例えば断熱材の内側に気密シートを貼っているとします。冬場は室内の湿度が外よりも高いのですが、湿気は気密シートで止まるため断熱材には影響しません。

 ところが夏場は外の湿度が高いため、室内に入ってこようとします。すると同じく気密シートのところで湿気がとどまります。室内はエアコンで温度と湿度を下げていますから、温度差によって断熱材の隙間に結露が生じてしまうのです。

 湿気は水蒸気でとても細かな物質のため、完全に入らないようにすることはできません。その特性を考えてできる対策としては、断熱材の外側にある耐力面材(※)やプラスターボードを透湿抵抗値の低いものにする方法です。“湿気が入っても抜ける”という原理を働かせるわけです。また、透湿抵抗値の高い(湿気が移動しにくい)断熱材を一層だけ使用することも有効な手段のひとつです。

出典=『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』

 ちなみに外断熱など、透湿抵抗値の高い断熱材を二重にして施工すると、外壁からの漏水があった場合に建物のダメージが大きくなるリスクがあります。断熱材に湿気がたまるとシロアリや腐朽菌を発生させることになり、断熱性が落ちるばかりでなく、建物の損傷につながってしまいます。鉄骨造やRC構造は外断熱になるためリスクが高いのです。

※耐力面材:地震などで加わった力を壁全体に分散させる効果のある部材。

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