「この間、息子にお願い事をしたときに『怒った言い方しないで』って言われたんです。私は普通に言ったつもりだったのに、気をつけないとそう聞こえちゃうときがあるんですね」
家の片づけは家族の生活に関わることなので、コミュニケーションが欠かせません。「これはまだ使う?」「これはどこに収納した方がいいかな」など話すことが増えるので、コミュニケーションがだんだん円滑になっていきます。
「体調が悪くて夫にきつく当たってしまったときも、素直に『ごめんね』って伝えられました。いつもそのまま険悪なムードになるんですが、ちゃんと伝えるって大事ですね」
家の中がきれいになってイライラが減ったこともあり、家族の関係は以前よりもずっとよくなりました。さらに、“取り出しやすく、戻しやすい”を考えながら、何度も収納場所を変えてモノの定位置を決めたので、散らからない家をキープできています。
「トライ&エラーをくり返すことって、片づけだけじゃなくて子育てにも仕事にも活かせます。うまくいかなくても、どうすればできるようになるかを考えるようになったことは、大きな学びでした」
家が片づいたことはもちろんうれしいことでしたが、それ以上に自分の変化が大きかったことにも喜びを語ってくれました。
「先日、仕事のオンライン研修があってグループ別にリーダーを決める機会があったんですけれど、自分からリーダーをやったんです。片づける前だったら、自分からはあまりしゃべろうともしなかったと思います。すごく変わりましたね」
そう穏やかな笑顔で話してくれるえりこさん。数ヶ月前まで、散らかった家の中で家族に当たり散らしていたとは思えません。片づけによるコミュニケーションが、自分も家族も幸せにしてくれることを改めて教えてくれました。
●西崎彩智(にしざき・さち)/1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・家族間コミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト?」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。NHKカルチャー講師。「片づけを教育に」と学校、塾等で講演・授業を展開中。テレビ、ラジオ出演ほか、メディア掲載多数。